皆さま、明けましておめでとうございます。本年もお楽しみくださりましたら幸いです。素敵な一年となりますようにお祈り申し上げます。本年も何とぞよろしくお願い申し上げます。
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各位親愛的朋友們:恭賀新禧!謝謝您一直以來的照顧。謹祝闔家萬事如意、健康長壽、天倫永享、後福無疆。今後也請您支持一下。希望您闔家能度過開開心心的一年🙏
Happy New Year ! Thank you for your kind attention. Hoping that you will be looking forward to them, then also hoping that it will be a wonderful year.🙏
Bonne année ! Merci pour votre aide chaleureuse. En espérant que vous les attendez avec impatience, et aussi en espérant que ça sera une merveilleuse année.🙏
¡Feliz Año Nuevo! Gracias por su cálida ayuda. Esperamos que los esté esperando, y también esperamos que sea un año maravilloso.🙏
Felice anno nuovo! Speriamo che li attendi con impazienza, anche speriamo che per voi possa essere un'anno meraviglioso.🙏
2023年1月1日
皆さま、明けましておめでとうございます。
昨年の一年は全く何もKF-Ars Sinicaを更新できておりませんでして、
ファンになって下さりました方に申し訳ないですけれども、
新たな動画を作る暇もないほど密かに充実しておりました。
まあ、KF-Ars Sinicaでも、KF-Scholaのチャンネルでも、
もう既に沢山の動画を一昨年にシェアーしましたからね。
手間をかけて製作しましたから、ゆっくりと大切にお楽しみいただけると思いますから、
過去の貯金で何とかお願い申し上げます(笑)
そして、毎年恒例の干支を調べてみようという企画が、
もう3年も続いてますけれども、
今年の干支は癸卯(きぼう、みずのとう)で兎年なんですよね。
ですから、こちらに小篆から隷書に行く所から、
また楷書に行く所、
また、草書がございまして、
字形の変遷が一目瞭然なんですよね。
次はこちら謹賀新年とありまして、
甲骨金文、春秋時代の侯馬盟書、
玉に書かれた肉筆ですね。
そして、戦国時代を飛んで、秦代に制定された小篆が、
説文解字に収録されていまして、
そして、漢代の隷書と唐代の楷書でして、まあ、褚遂良の雁塔聖教序ですけれどもね。
こうした形で字形の変遷を3000年以上前から、
1400年前まで概観することができます。
次のページに行きまして、
甲骨金文で今年の干支を探してみましたら、
こちらにありました!
癸卯(きぼう、みずのとう)
癸卯(きぼう、みずのとう)
こちらに見えておりますけれどもね。
これとこれなんですけどね。
なかなか可愛いです(笑)
甲骨の方は、今年は豊作かどうかということを刻み込まれておりますし、
金文の方は西周の時代に周の王さまから、
貝を十朋もらったことを記念して作られたことが銘文に鋳込まれておりますけれども。
甲骨金文とも日付を書くためにここに鋳込まれていたり、
刻み込まれていたりして、
癸卯が使われてたということがわかるじゃないですかね。
そして、こちらの画面では、
癸卯の字源と語源を考えてみるため、
漢語音韻学や比較言語学で再構された上古漢語や中古漢語の音。
それと古文の用例とか、
あと甲骨金文や戦国文字など、小篆以前のですね。小篆はこちらですけれども、字形を集めました。
それで楷書はこちらですね。
先ず、癸(き)からいきますけれども。
これはやはり、戣(ほこ)を象形したと考えられまして、
両方にこういった戣(ほこ)の刃がついて、こちらにございますけれども。
青銅で出来て残ってますけども。
それの棒はまあ木できてるから、無くなっちゃいましたけれどもね。
それでこれがクロスの形で二本が交差してるように見えるわけですね。
それでまあ双鈎(そうこう)という武器がありましてね。
双(ふた)という字に鈎(かぎ)という字でして、
ちょっと鈎が付いたような形でして、
それもバッテンであるんですけれども。
まあ、あれは鈎ですれども。
こちらはこういった形の戣(ほこ)が四つ付いてるわけですよね。
ということで、今度は文献資料を見ますと、
この少々の《尚書·顧命》の中に「戣を執る」と書いてある。
註釈を見ましたら、孔傳に「戣(き)や瞿(く)は皆、戟(げき、ほこ)の屬」、類であるとみえるわけですよね。
上古漢語を見てみましたら、
先ず干支で使っている方から行きましたら、
「癸」*kʷijʔでありまして、
こちらの戈の方は「戣」*[ɡ]ʷrijみたいな音なんですけれども。
これの語源を考えるわけですよ。
そうしたら、これは今から六千年位前の漢蔵祖語(#2247 PTB *grəy COPPER)で青銅という意味ですけれども。
じゃあ、何でそれが戈なんだと言いましたら、
チベット語(གྲི gri)はやはりこちら(漢蔵祖語)の青銅から来て、刀という意味を持っている訳なんですね。
派生しているわけですね。
だから、それを傍証として考えれば、こちらの漢語、上古漢語においても、
武器のような刃物のようなものを考えているんじゃないかということが言えるわけですし、
こちらのタンクル祖語(*kʰaj)を見ましたら、これは「刀」という意味ですね。
クキ=チン祖語(*hray)も「斧」という意味なんですね。
だから関係あるんじゃないかなと思って持ってきたわけですよね。
そこで次は今度は字源の方を考えていくわけですけれども。
もう1個これには説があるんですよね。
今度こちら「揆(き)」の意符「手(扌)」がついてるわけですよね。
「測る」という意味で「定規」を意味している言葉ですけれども。
それで語源の方を見ましたら、
こちらの「規」、もう1個ある規格の「規」の方も、全てまとめてみますと、
先ず、こちらの「揆」*[ɡ]ʷijʔでしょ!
こちらの「規」*kʷeなんですよ!
それらの語源は一緒じゃないかなと思って、
私がちょっと漢蔵祖語まで、今度は当たるわけですね。
漢蔵祖語(#57 PTB *(g/k)raŋ MEASURE / COUNT)は、やはり、「測る」とか、「数える」という意味ですね。
それでやはり、それに関係して、タニ祖語(krɯ)とか、ナガ祖語(khaj)とか、クキ=チン祖語(*hriʔ)とか、
それらと関係がありそうなんですよ!
それでよく見ると、
先ほどの「戣」の方は、これは「斧」でしたけれども、クキ=チン祖語(*hray)でしょ!
(「揆」の方の)クキ=チン祖語(*hriʔ)ですから、この子音の並びが何かすごい似てますよね!
これらは別の単語、別の語源ですけれどもね。
まあ、それぞれ上古漢語で音が近いから、この部品「癸」を使って、仮借をして、こちらの言葉を書いたわけですから、
そうしたら、上古漢語よりも上の漢蔵祖語のレベルでも、発音が一緒であれば、分岐してゆきましたそれぞれの言語でも、それぞれが似た音をしていてもおかしくはないですよね。
そういうことでかなり多角的に今、攻めてるんですよね。
そして、《史記·律書》の方でね。今度
古文の方で上古漢語で見てみますとね。
この 「癸」という字は、やはり手偏「扌」がついた「揆」であると書いてあって、
その意味は「揆度」という言葉は、これは、「測定する」という意味ですよね。
《孟子·告子上》の方にも、「規矩」とありますけれども、
この趙岐という人が書いた註釈には、やはり、「規は円をなす」という、
要するにこれは「円を描く」といういみでしょ!
ですから、コンパスみたいなものであると書いてあるわけですね。
今は二つの候補が上がってきちゃってね。
じゃあ、結局、「戣(ほこ)」と「揆(はかり)」のどちらが正しい字源なんだと考えてみましたら、
やはり、「癸(き)」の甲骨金文から春秋戦国までの文字を集めても分かんないんですよね。
同じ声符を持つ、今度は諧声系列の漢字「戣(ほこ)」と「揆(はかり)」をちょっと見てゆきたいと思うんですけれども。
結局こちらにありますように伝抄古文とか、説文籀文でしかなくて、同時代のものではないんですけれども。
でも、何だか「矢」みたいにされて訛っていまして、
ここにありますけれども、やはり、武器っぽい!
こちらなどは、完全に三つに分かれた戈みたいな形をしておりますけれども、
「規」の「夫」は「矢」ぽいですし、
「聿」と「丌」にも見えなくもないんですよ。
武器のやはり「戣(ほこ)」と考える方が妥当じゃないかなというふうに考えました。
こうして、こう元々この文字「癸」だけで「戣」を意味してしまっていたわけですけれども、
こちらの干支の方にそれは初起字「癸」と言うんですけれども、
「癸」が仮借で使われてしまいましたから、
結局この意符「戈」を付けて、諧声系列に後起字「戣」として、
そうして、この本来の意味が残されているんじゃないかなとこういうことは多いですよね。
ですから、語源と字源を解明できてきたんじゃないかなと!
この調子で次にこの「卯(ぼう)」の方に行くわけですけども。
この*mˤruʔという音ですけれども。
これでこのかなり難しい形になっている「劉」は意符「刀(刂)」が付いてたりする、この形「𠛓」は特にそうですけども。
引き裂くとか、殺すという意味でしてね。
甲骨で見ましたら、これは「牛を卯(ころ)す/卯(さ)く」とか、
そして、《説文》とか、《爾雅·釋詁》など、古い辞書では、
これらの文字は「殺す」という意味であると書いてありますね。
それで《玉篇》という、もうちょっと後にできた辞書では、
「𠛓」という字に意符「刀(刂)」をつけて、「割く」という意味だという風 に書いてありますね。
それで見てみると、この語源は、やはり、漢蔵祖語まで遡って候補を探してみますと、
漢蔵祖語(#2459 PTB *(m/b)rak CUT / TEAR / MAUL / LACERATE)ですね。
「切る」とか、「割く」、そういう意味も持っている言葉なんですよね。
それでビルマ語(မြက် mrak)とか、ジンポー語(mjàʔ)とか、トーロン語(pra)は、これらは「切る」という意味ですね。(イド語(mu⁵⁵)は殺すという意味もありました。)
ですから、字源は引き裂いてる様を象形してると、
まあ、定説ではされているんですけれども、
私は沢山の殷周の甲骨金文をみましたら、
どうも、この下の方の足の曲がり方が気になっていまして、
これはどうも酒などを蓄えていた壺の上部の形ではないかと!この部分ですね。それで丸もありますしね。
取っ手が付いています。
そういう風にちょっと閃いちゃったんですよね。
本当かよ!ということでして、結局この壷は、酒を蓄えていた壷なんですよね。
ですから、こちらの「酉(酒)」の方を見てみましたら、
こちら「酉」もやはり干支に使われているんですよね。
そこで今度はこれらの二つの文字の音を見ましたら、
「卯/戼」mˤruʔに対して、「酉/丣」N-ruʔですから、何かもう殆ど子音の配列が似ています。
mとN-は本当にもう近い音ですから!
ですから、音声学的に言っても近いわけですよ!
甲骨金文では、「酉」を見ましたら、酒樽の形そのままでして、
こちらはもう液体が中に入っているようですね。
そして、一本棒が中にあります。
それで蓋がありますけれども。
それで伝抄古文では、こんな形「丣(酉)」になってしまいまして、
もうこの「戼(卯)」の方の形と似ている訳なんですよね。
上に棒が一本あるかないかだけです。
しかも、こちらの楷書化された異体字の方を見ると、ちょっと何か突き出ているのか、突き出ていないのか、殆ど分からないくらいの近い形であるんですよね!
何かもう正月早々から、今年も新説を出して攻めておりますけれども。
この「巳(たつ)」という字、あとは「子(ねずみ)」という字は、甲骨金文では、元は違うものが取り違えられたり、
あながち、この「酉(とり)」と「卯(うさぎ)」も関係がありそうなんですよ。
そして、言語の方からも音が近いですから、仮借が可能だと思うんですよね。
ですから、「卯」はこちらにありますように酒などの液体を蓄えた青銅器のこれは円壷と言うんですけれども。
壷でここが丸いので、
方壷という四角いものもあるんですけれども。
壷には取っ手があって、それを取っ手をつける丸があるし、
なんかこれそれを象ってんじゃないのと思っちゃったわけですね。
これで甲骨文はやはり刀で骨とかに刻まれたから直線的になってますよ。
でも、やはり、こう少し下がしなってますね。
それで金文は完全にもう下がもう広がってるのが分かります。
形的にはいいんじゃないかなと!
それでお酒 の方を今度はこの「水(氵)」が付いて、これなんか水の中に入ってしまってますね。
それで下に意符「水(氵)」が付いて、こう「水」という形でこれも同じですよね。
先ほど同じくこの干支「酉」に文字が取られちゃったから、
本当の意味の酒は意符「水(氵)」をつけて、
これは「酉」じゃないよ!干支じゃないよ!「酒」だよ!という風に示してるわけですよね。
そういった形で見ましたら、「酒(*tsuʔ)」の方の語源が気になってしまって見ますと、
漢蔵祖語(#2798 PTB *yəw LIQUOR)なんですよね。
これも「酒」。
それでクキ=チン祖語(yuu)とか、ナガ祖語(yəw)とか、これは漢蔵祖語と同じです。
そして、ボド語(zəw)とか、ガロ語(tśu)とか、これは上古漢語(「酒(*tsuʔ)」)にそっくりですよね。
「酉/丣(N-ruʔ)」を見ましたら、「酒(tsuʔ)」は、ちょっと違う!えーと思いますけれども。
やはり同じ共用する部品「酉」を持っていて、声符として機能してるからいいんじゃないかなということを考えられるわけですよね。
ですから、この部品「酉/丣(N-ruʔ)」を使って、この言葉「酒(tsuʔ)」を書いたということでして、(また、「酋(m-tsu)」や「尊([ts]ˤu[n])」などの容器も「酒(*tsuʔ)」と関係があります。)
「留」という字も、こちらにありますけれども、同じ部品「卯」を持ってるわけですね。
声符「卯」として振る舞っていまして、意符「田」となっていますね。
そして、上古漢語(「留」C.ru)で分からない子音(C.)が、Baxter-Sagartさんたちの再構にありましてね。
鄭張尚芳さんの再構(「留」m·ru)ではm·なんですよ。
だから、「卯」*mruːʔと同じなんですよ!
とにかくruの部分は一致してますけれども。
それで「留まる」に関連して、「溜まる」という字がありますけれども。
それは最後に*-s suffixが付いているんですよね。
古文ではこれ「溜」は水流を意味していて、「溜まる」とは逆の「流れる」という意味をしていましたから、
方向転換の*-s suffixと考えられるんですよね。
つまり、「留まる」に対して、「流れる」というのは逆だから、
そして、前に取り上げましたけれども、売り買いの「売買」とか、
受け渡しの「授受」とか、
両方とも同じ発音なんですね。
日本語では声調が落っこっちゃったから、この*-s suffixが反映されなかったわけですよね。
中国語では声調に引き継がれて、中国語でも一緒になっちゃってるのもありましたけれども。
ですから、逆の方向や意味、「留まる」と「流れる」は、やはり逆ですから、
これらはやっぱり関係があって、
「流れる」だって、語根(ru)を持ってるんですよ!
ですから、文字の上から見れば、これ
らは声符が異なりますけれども。
言葉の上から見れば、同源じゃないかと考えられます。
それで意味と子音の配列が同じであれば、そういう風に判定できるんですよね。
それで言語と文字、漢語と漢字を分けて考えていくってことが大事じゃないかなということでやってまいりましたけれども。
もう語源を今度は考えましたら、「流れる」に関して、
そうすると、この漢蔵祖語(#2428 PTB *lwi(y) FLOW / STREAM / RIVER)じゃないかと!
それでrとlは混同されてよく、上古漢語でありましたけれども。
やはり、これは、「流れ」とか、「川」という意味でして、
西夏語(ljụ)とか、クキ=チン祖語(*luuy)とかも、同じ意味で同じ語源なんですよ。
それでまた別の説では、チベット語(རྒྱུ rgyu)とか、タニ祖語(*brɯ)なども、「動く」でして、
「動く」から、上古漢語「遊/游(*lu, *[N-]ru > jɨu)」なんですよ。
まあ、(音の上では)これ「酉/ 丣」*N-ruʔの最後のglottal stop(ʔ)を取った形なんですけれども。
それらも関係あるんじゃないかなと、「流れる」に関連してありますけれども。(また、ナガ語のゼメ語(Mzieme)でreuが留まるという意味でreukungが川という意味でした。)
ちなみにこの「劉」さんという、まあ、中国人に多い姓で劉邦の「劉」は、説文解字にはないんですよね。
だから「劉」に小篆が書いてありませんけれども。
この意符「金」に声符「留」の「鎦」があるとか、
あとは意符「金」に声符「卯」があるとか、
声符「留」に意符「刀(刂)」(もしくは「刃(刅)」)がある形とか、
まあ、これらは、戦国時代の三晋古鉨という、三晋で使われた古鉨、古い印章に人名として出てきているから、
秦漢の後にこの「劉」さんに関係ある可能性 がある人名かもしれません。
ということでね。以上の話をまとめてみましたら、
この「癸(き)」という文字の字源は戣(ほこ)じゃないかということですね。
それで語源は*grəyで青銅ではないか、
そして、こちらの「卯(ぼう)」という文字の字源は、酒を溜める壷の上部を象って、それで語源はやはり酒の方の*yəwではないか、ということになりまして、
物を割いた形なんじゃないかという、
こちらの候補「鎦/劉/𠛓」が通説ではあるんですけれども、
それを破る新しい説をいきなり話し始めちゃったということでね。
まあ。今回のこの干支の両方の文字とも二つぐらい違う説があって、
どっちかはやはりなかなか決めがたい部分もあるんですけれどもね。
でも、そうした形で言語と文字、漢語と漢字のデュアリティというスキームに従いまして、
これはモットーでしたから!
もう、漢語だけでなくて、漢蔵祖語のさまざまな言語たちにまで射程を拡げて探究してまいれたんじゃないかと思います。
そうした形で戻ってまいりましたけれども。
どうか皆様も素敵な一年をお過ごし下されば幸いです。
ありがとうございました!
それでは失礼をいたします。