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プレリュード・リチェルカーレ・トッカータ・ファンタジアの系譜

Bauyn写本(F-Pn Rés. Vm7 675, 14r)

皆さま、こんばんは。いつもありがとうございます。今まで音楽のシェアーを通じ、おかげさまで多くの方とご縁がありました。お付き合い下さる皆さまの全てのページに訪れますため、私のキャパシティーを超えてしまい、ごぶさたしてしまいましたが、本年度は少しずつ投稿できましたら幸甚に存じます。

また、先人が作りだした本物の作品に触れて色んなことを感じたり得てきましたけれども、今までは自分の考えをあまり語らないようにしておりました。(それでも色んなことがらを書き散らしてしまいお見苦しい限りですが、)今後は何を感じたか、学んだかなどを少しばかり書いてみたいと思います。音楽を弾くとき、聴くとき、何かの気づきになるようなこと、それが学びとなることを求めています。作品や演奏を批評するより、相手から自分に語りかけてくる音楽を受け止め、聴き届け、実際に大バッハの鍵盤音楽を少しずつ弾くことを日課にしておりまして、自分で気づきを試してみたりします。

実際に先人の実作の楽譜、名手の実演の録音に触れて、気づきを重ね、発想や創造のスケールを大きくしてきました。色んな手法を用い、色んな角度からアプローチしますが、大量に資料を集め体験してゆき、総体としてある瞬間に頭の中で本質のラインが見えてくる経験が繰り返されます。そうして、今まで気に留めないことが、重要なことに感じられたり、世の中で取りただされていないことが、本質に近いことに思えたり、自らで探しながら得てきた感覚や発見は、そのまま個性となり、もともと伝統と向き合い、深めてきたことですから、独りよがりにもならず、世界が開けると思います。

前奏曲や幻想曲の様式は、ルネサンス=バロック期に調律の精度や楽器の性能を確かめる即興的な演奏を試行錯誤して、Praeludium・Prélude・Praeambulum・Préambule、Fantasia・Fantaisie・Fancy、Entrée、Ricercar・Richerche、Tiento・Toccataなどに結実しました。イタリアやスペインの器楽、イングランドのヴァージナル楽派、ネーデルランド鍵盤楽派、北ドイツ・オルガン楽派、フランスのクラヴサン=オルガン楽派は古くから交流があり、基本の発想や構造を共有しながら、地域や時代、環境や用途に適応するように修飾しながら発展してきたと考えられます。

鍵盤楽器(オルガン・チェンバロ・クラヴィコード・フォルテピアノ)、撥弦楽器(リュート・ビウエラ・テオルボ・ギター)、擦弦楽器(ヴィオール、ヴァイオリン、ヴィオロンチェロ、コントラバス)など、調弦が必要な楽器全般、気鳴楽器(フルート、リコーダー)などの名手たちも前奏曲を生み出してきました。即興的な楽曲だけでも、時代・地域・楽器・目的・書法・様式など異なる数千の実例(二段譜表やタブラチュア)に接してきましたが多すぎるため、フランス様式のリュート(フランス式タブラチュア)[は次回]とクラヴサン楽派(非定量的前奏曲とアルペジオ前奏曲)に限定して系譜をたどります。

フローベルガー(Johann Jakob Froberger, 1616-1667)はフレスコバルディ(Girolamo Frescobaldi, 1583-1643)からトッカータを学び、ドレスデンでヴェックマン(Matthias Weckmann, 1616-1674)と交流して、幻想様式(stylus fantasticus)や対位法的処理などを伝えました。ルイ・クープラン(Louis Couperin, 1626-1661)はパリでフローベルガーと親交して、トッカータに影響を受けたり、リューティストたちのブリゼ様式(style brisé)で小節線がない〈非計量的な前奏曲(Prélude non mesuré)〉(1658年頃)を14曲ほどBauyn手稿やPerville手稿で残しました。

それから、ダングルベール(Jean-Henri d'Anglebert, 1629-1691)は3曲(1689年)、ニコラ・ルベーグ(Nicolas Lebègue, 1631-1702)は5曲(1677年)、ルルー(Gaspard Le Roux, c.1660-1707)は4曲(1705年)、マルシャン(Louis Marchand, 1669-1732)は1曲(1703年)、クレランボー(Louis-Nicolas Clérambault, 1676-1749)は2曲(1704年)、ラモー(Jean-Philippe Rameau, 1683-1764)は1曲(1706年・RCT 1)を出版しました。ルイ・クープランの天才的な着想から始まり、クラヴサンとリュートやヴィオール奏者とも交流を続けながら発達しました。

大クープラン(François Couperin, 1668-1733)の《クラヴサン奏法(L'Art de toucher le clavecin)》第1巻(1716年)52-65頁に8曲の前奏曲があり、アルマンド風で計量的(mesuré)で通奏低音に上二声が係留し合いながら、味わい深く紡がれてゆき、上品な趣きの仕上がりです。大バッハ(Johann Sebastian Bach, 1685-1750)の〈フランス組曲 第4番〉(1722年・BWV 815a)の異稿(D-B Mus. ms. Bach P 289, Faszikel 13)や〈平均律クラヴィーア曲集 第2巻 第3番 嬰ハ長調〉(1738年・BWV 872a)の異稿(P 226, Faszikel 3)も分散和音の前奏曲です。

歴史を通して、実作に触れて、体験し続けて、近現代音楽にも役に立つため、西洋音楽の根本発想を発達させた古楽に関心を寄せています。西洋音楽は論理的に和声法や対位法のシステムを発達させましたから、抽象的に楽器の音色に依存しない自由な世界で感覚が深めております。巨匠の実作や民族舞踏など生きた音楽に触れ、音楽の本質を捉えてゆけ、大きな学びの快感を得てゆけます。実際に過去の巨匠たちは、対位法や和声法の規則や禁則ではなく、偉大な遺産にどれだけアクセスしたか経験の豊かさにより、音楽家のスケールが自ずと決めることを感じました。

大バッハの音楽への深い洞察により、ヴィルムヘルム・フリーデマンの楽譜帳(1720年)で装飾音や〈運指説明〉(BWV 994)の次に置かれた初めての音楽が〈前奏曲 ハ長調〉(BWV 924)であり、《平均律クラヴィーア曲集 第1巻》(1722年)が分散和音の〈前奏曲 ハ長調〉(BWV 846)が据えられることは、作曲システムの根幹が感じられ興味深いです。また、〈平均律クラヴィーア曲集 第2巻 第3番 前奏曲とフーガ ハ長調〉(1738年・BWV 872a)の初稿(D-B Mus. ms. Bach P 226, Faszikel 3)は24小節に48のコードに対する最もシンプルなアルペジオのゼクエンツでドライブ感が抜群で彩が豊かで味わいを深めます。

西洋音楽における作曲の極意は、旋律の構成に関する対位法や和音の構成に関する和声法により、確固とした骨子を基礎として、チャーミングな対旋律を用意して、エキサイティングな非和声音、例えば経過音の変化、係留音の感覚、装飾音の刺激などが生きてくるように工夫すること、演奏の極意は、フレージングやアーティキュレーション、強弱法と緩急法を自在に用い、特殊なリズム(アウフタクト、シンコペーション、ヘミオラ、イネガル奏法)などを工夫して、楽器の音色を活かしたオーケストリゼーションなど、音の響きに対する感性を気づきを重ねて開発することに感じられます。

順次進行のみの旋律内部にも豊かな和声機能があり、強弱や緩急に影響したり、更に対旋律が絡み合うとき、二つの旋律が合流する音は強くなるなど、作曲法(和声法と対位法)、演奏法(強弱法と緩急法)は実際の音楽の中では一つであり、自然な音楽を生み出すことにつながります。強弱法はリズムにめりはりを与えるだけでなく、縦方向への音程の積み上げを際だたせ、緩急法はテンポが変わるだけではなく、緊張と弛緩をもたらしたり、管弦楽法は多声音楽の合唱群に由来して、楽器の音色などを加味して、音楽の構成を明晰に把握して、作曲や指揮が行われました。

また、楽譜やタブラチュアでは、二つの座標、縦に音の高さ、横に時の流れで音楽が構成されています。和声法・強弱法は縦、対位法・緩急法は横に関係します。縦に積み上げられた音程(和音)がコードになり、横に引き延ばして旋律や和音の流れを生み出し、音楽が構成されています。楽譜に和音が縦に書かれていても、絶妙に和音が分散したり、弱拍で衝突する音程を回避したり、実際には複雑な経過和音が生じてきて、和声の機能も楽譜のように静的はなく、時間の流れが旋律や拍節と関連して、強弱法や緩急法と密接に関係して、動的に常に変化して進みます。

分散和音様式の前奏曲には、縦に音程を積み上げでは苦い響き、セカンダリードミナント、属七や減七の和音が含まれ、転調や終止に重要な手がかりを与えます。通奏低音のシステムは、和声機能を考察して分類して、極限までシンプルに音楽の骨子が表現されていることが分かります。音楽を耳に聴こえた音だけで聴いてはならないことも分かります。例えば、スカルラッティは宮廷・劇場・街中・田舎などあらゆる音楽体験を鍵盤楽器で表現して、最晩年はスケールが大きく、シンフォニアやオペラアリア、舞曲や歌曲など、鍵盤音楽のパラダイムから脱して自由自在になりました。

人間は絶対的な状態より、相対的は変化を感じる性質があり、大バッハやヴァイスは、一つの音に旋律構成、音程関係、和声進行などの多くの要素を持たせ、少ない音で多くの情報を与える対位法を駆使して、常に音楽のどの瞬間でも変化が起きるからこそ、音楽性が豊かに感じられます。人生においても同じ環境で過ごして何事もないより、起伏があるほうが面白い人になりますよう、協和音程や五度圏に従う転調に不協和音や遠隔調をはさみこんだり、調性音楽に旋法らしさを入れた和声付けが細やかにして、凡庸を打ち破り、音楽に味わいが深まると実作が語りかけてきます。

楽譜を目の前にして演奏すると細部に目が行きやすいですが、旋律が絡み合うフーガ、楽器群が応じ合う管弦楽曲などにより、全体を明晰に把握する感覚を高め、宮廷舞踏や民族音楽などでリズム感覚を養い、自然な音楽をイメージして、実際に楽器で表現して、演奏を実行できます。特に古い時代の楽譜は必要な音だけ書かれたメモのようで大らかに構成され、自然な流れで表現されており、自由度が高く、音楽性が豊かですから、実作から得られる気づきが大きいことを感じております。今回もお付き合い下さり、ありがとうございました。皆さまもお元気にお過ごし下さい。

N. Clerambault [sic; Louis-Nicolas Clérambault, 1676-1749] Organiste du Roy en sa Royale Maison de St. Louis [sic Saint-Louis], à St. Cur [sic Saint-Cyr] et de St. Sulpice [sic Saint-Sulpice]. par Louis-Simon Lempereur, 1728-1808

ダウランド(John Dowland, 1563-1626):〈プレリュード〉(1625年頃・Margaret Board Lute Book, 29)

ジョン・ストゥルト(John Sturt, c.1565-1625):〈プレリュード〉(1613-16年・John Sturt M.L. Lute Book, 22)

ブサール(Jean-Baptiste Besard, 1567-c.1625):〈プレリュード〉(1603年・Thesaurus Harmonicus, 5)

メッサンジョー(René Mesangeau, 1568-1638):〈プレリュード 変ロ長調〉(1638年・Pierre Ballard, 16-17; CLFMes N°31)

ブーヴィエ(Nicolas Bouvier, c.1570-c.1620):〈プレリュード〉(1638年・Tablature de Luth Accords Nouveaux, 40-41)

老ゴーティエ(Ennemond Gaultier, c.1575-1651):〈プレリュード ニ短調〉(1716年・F-B ms. 279152 dit. Vaudry de Saizenay I, 12)

ニコラ・ヴァレ(Nicolas Vallet, 1585-1642):〈プレリュード〉(1618年・Paradisus musicus testudinis, 3)

ピネル(Germain Pinel, c.1600-1661):〈プレリュード ト短調〉(1651年・D-SWl 641, 29-30; CLFPin N°4)

ドニ・ゴーティエ(Denis Gaultier, 1603-1672):〈プレリュード 二短調〉(1672年・F-Pn Ms. Rés. 474, 6-7)

デュフォー(François Dufault, 1604-1672):〈プレリュード ト短調〉(1670年頃・D-ROu ms. Mus. Saec. XVII.18.54, 156-57; CLFDuf N°87)

グムプレヒト(Johann Gumprecht, 1610-1697):〈プレリュード ヘ長調〉(1670年頃・D-ROu ms. Mus. Saec. XVII.18.54, 5v- 6r)

フレスノー(Johannes Fresneau, c.1610-c.1660):〈プレリュード 嬰へ短調〉(1655-70年・A-ETgoëss Ms. I, 58v-59r)

ビットナー(Jacques Bittner, c. 1620-c.1690):〈プレリュード ト短調〉(1682年・Pièces de luth, 80-81)

ジャック・ガロ(Jacques Gallot, c.1625-c.1695):〈プレリュード 嬰へ短調〉(1684年・Pièces de luth, 5-6; CLFGal N°1)

ムートン(Charles Mouton, 1626-1710):〈プレリュード イ短調〉(1679年・Pièces pour luth de différents auteurs, 22-23; CLFMou N°11)

ロイスナー(Esaias Reusner, 1636-1679):〈プレリュード ト短調〉(1667年・Delitiae Testudinis, 3)

ド・ヴィゼー(Robert de Visée, c.1650-1725):〈プレリュード イ短調〉(F-B ms. 279152 dit. Vaudry de Saizenay I, 227)

ロジー伯爵(Jan Antonín Losy, c.1650-1721):〈プレリュード ヘ長調〉(PL-Kj 40620, 4r-5r)

ベルハルジスキー(Rochus Berhandtzky, c.1660-c.1720):〈プレリュード ニ短調〉(A-Wgm7763-92, 2-3)

ケルナー(David Kellner, 1670-1748):〈ファンタジア ヘ長調〉(PL-Wu RM 4140, 10-11)

キューネル(Johann Michael Kühnel, c.1670-1728):〈プレリュード ヘ長調〉(A-Wn ms. 18829, 27v-28r)

バロン(Ernest Gottlieb Baron, 1696-1760):〈プレリュード イ短調〉(B-Br Ms. II 4087, 5r-5v)

コンラディ(Johann Gottfried Conradi, c.1690-1747):〈プレリュード ハ長調〉(1724年・Neue Lauten Stücke, 7)

クロプフガンス(Johann Kropffgans, 1708-c.1770):〈ファンタジア〉(1760年頃・D-LEm Ms. III.11.64, 16)

ルイ・クープラン(Louis Couperin, 1626-1661):〈前奏曲 イ短調(Prélude à l'imitation de Mr. Froberger)〉(1652年頃・F-Pn Rés. Vm7 675 dit. Manuscrit Bauyn II, 9r-12r)

ルイ・クープラン(Louis Couperin, 1626-1661):〈前奏曲 ハ長調(Prélude non mesuré)〉(1652年頃・F-Pn Rés. Vm7 675 dit. Manuscrit Bauyn II, 14r-15r)

F-Pn Rés. Vm7 675, 9r
F-Pn Rés. Vm7 675, 14v
F-Pn Rés. Vm7 675, 14r
F-Pn Rés. Vm7 675, 15r

ダングルベール(Jean-Henri d'Anglebert, 1629-1691):〈前奏曲 ト長調〉(1689年・Pièces de clavecin, 1-2)

ニコラ・ルベーグ(Nicolas Lebègue, 1631-1702):〈前奏曲 イ短調〉(1677年・Pieces de Clavessin, 1-2)

ルルー(Gaspard Le Roux, c.1660-1707):〈前奏曲 ヘ長調〉(1705年・Pièces de clavessin, 32-33)

マルシャン(Louis Marchand, 1669-1732):〈前奏曲 ト短調〉(1703年・Pièces de clavecin, 1-2)

クレランボー(Louis-Nicolas Clérambault, 1676-1749):〈前奏曲 ハ長調〉(1704年・Pièces de clavecin, 1-2)

ラモー(Jean-Philippe Rameau, 1683-1764):〈前奏曲 イ短調〉(1706年・RCT 1・Pièces de Clavecin, 1-2)

大クープラン(François Couperin, 1668-1733):〈前奏曲 ハ長調〉(1716年・L'Art de toucher le clavecin, I/52)

ヴァイス(Sylvius Leopold Weiss, 1687-1750):〈前奏曲 ニ長調〉(WeissSW26.1・GB-Lbl 30387, 125v)と〈奇想曲 ニ長調〉(WeissSW25・GB-Lbl 30387, 153v-154r)

ヴァイス(Sylvius Leopold Weiss, 1687-1750):〈前奏曲 ハ短調〉(WeissSW27.1・GB-Lbl 30387, 129v)と〈幻想曲 ハ短調〉(WeissSW9・GB-Lbl 30387, 67v-68r)

ヴァイス(Sylvius Leopold Weiss, 1687-1750):〈前奏曲 イ長調〉(1725年頃・WeissSW44.1・D-Dl Ms. Mus. 2841/V/1, 142) チェンバロ版

大バッハ(Johann Sebastian Bach, 1685-1750):〈フランス組曲 第4番 変ロ長調〉(1722年・BWV 815a)の異稿(D-B Mus. ms. Bach P 289, Faszikel 13, 144-145)

大バッハ(Johann Sebastian Bach, 1685-1750):《平均律クラヴィーア曲集 第2巻》第3番〈前奏曲とフーガ ハ長調〉(1738年・BWV 872a)の異稿(D-B Mus. ms. Bach P 226, Faszikel 3, 21)

ヨハン・ヤーコプ・フローベルガー(Johann Jakob Froberger, 1616-1667):〈トッカータ 第2番 ニ短調〉(1649年・FbWV 102・A-Wn Mus.Hs.18706, 6v-9r)

マティアス・ヴェックマン(Matthias Weckmann, 1616-1674):〈トッカータ ホ短調〉(D-Lr Mus. ant. pract. KN 147)

ドイツ式オルガン・タブラチュアの二段譜表への訳譜)

2021年3月9日

プレリュードの元祖!ドイツの修道士アダム・イーレボルク(Adam Ileborgh):一番古い〈プレアンブルム〉(Praeambulum in C, 1448年)

《ブックスハイム曲集》(Buxheimer-Orgelbuch・1460年頃)232番〈前奏曲〉(Praeambulum super C)

ファンタジアの元祖!ハンス・コッター (Hans Kotter, c.1485 - 1541):一番古い〈ファンタジア〉(Fantasia in Ut・1513-14年)

マリナー曲集(Mulliner Book, 1570年頃):〈ファンシー(A Fansye [on Marc'Antonio Cavazzoni, Salve virgo])〉

アントニオ・デ・カベソン(Antonio de Cabezón):〈ティエント(Tiento del primer tono)〉(1557年)

フレスコバルディ(Girolamo Frescobaldi):〈トッカータ(Toccata decima)〉(1615年・F 2.10)

ジョン・マンディ(John Munday):〈ファンタジア(Fantasia)〉《天気(Faire Wether)》(Fitzwilliam Virginal Book)

アンドレーア・ガブリエーリ(Andrea Gabrieli, c.1533-1585):〈第4旋法の前奏曲(Praeambulum quarti toni)

ウィリアム・バード(William Byrd, 1543-1623):〈ファンシー(A fancie for my ladye nevell)〉(1591年)

スウェーリンク(Jan Pieterszoon Sweelinck, 1562-1621):〈半音階ファンタジア(Fantasia cromatica)〉(SwWV 258)

スウェーリンク(Jan Pieterszoon Sweelinck, 1562-1621):〈ペダル前奏曲(Praeludium pedaliter)〉(SwWV 265b)

エアバッハ(Christian Erbach, c.1568-1635):〈リチェルカーレ(Ricercar quarti toni alla chromatica)〉

シャイト(Samuel Scheidt, 1587-1653):〈ファンタジア(Fantasia: Io son ferito lasso)〉(SSWV 103)

メルヒオール・シルト (Melchior Schildt, 1592-1667):〈前奏曲 ト短調(Preambulum in g-moll)〉

シャイデマン(Heinrich Scheidemann, c.1595-1663):〈前奏曲 ト短調(Praeambulum in g-moll)〉(WV 41)

シャイデマン(Heinrich Scheidemann, c.1595-1663):〈ファンタジア ホ長調(Fantasia in G)〉(WV 86)

デューベン(Andreas Düben, 1597-1622):〈前奏曲 ホ短調(Praeludium ex E vel A pedaliter)〉

カルゲス(Wilhelm Karges, 1613-1699):〈第4旋法の前奏曲(Praeludium quarti toni)〉

トゥンダー(Franz Tunder, 1614-1667):〈前奏曲 ト短調(Preambulum in g-moll)〉

キンダーマン(Johann Erasmus Kindermann, 1616-1655):〈前奏曲 第7番 ト短調(Praeambulum VII in g-moll)〉(1645年・Harmonia organica)

ヴェックマン(Matthias Weckmann, 1616-1674):〈第1旋法の前奏曲(Praeambulum Primi toni a 5)〉

ヴェックマン(Matthias Weckmann, 1616-1674):〈ファンタジア ニ短調(Fantasia ex D)〉

ケルル(Johann Caspar Kerll, 1627-1693):〈トッカータ ホ短調(Toccata cromatica con durezze e ligature in e-moll)

ブクステフーデ(Dieterich Buxtehude, 1637-1707):〈前奏曲 ハ長調(Praeludium in C-Dur)〉(BuxWV 137)
バッハ:〈前奏曲 ハ長調(Praeludium in C-Dur)〉(BWV 531)にそっくりですね。

ブクステフーデ(Dieterich Buxtehude, 1637-1707):〈前奏曲 ト短調(Praeludium in g-moll)〉(BuxWV 148)

ラインケン(Johann Adam Reincken, 1643-1722):〈トッカータ ト短調(Toccata in G)〉

ヨハン・クリーゲル(Johann Krieger, 1651-1735):〈前奏曲とリチェルカーレ ト短調(Praeludium und Ricercar in g-moll)〉

リューベック(Vincent Lübeck, 1654-1740):〈前奏曲とフーガ ト短調(Praeludium und Ricercar in g-moll)〉(LubWV 12)

ゲオルク・ベーム(Georg Böhm, 1661-1733):〈前奏曲 ハ長調(Praeludium in C-Dur)〉
足鍵盤も大活躍😃

ゲオルク・ベーム(Georg Böhm, 1661-1733):〈前奏曲、フーガと後奏曲 ト短調(Praeludium, Fuga und Postludium in g-moll)〉

レイディング(Georg Dietrich Leyding, 1664-1710):〈前奏曲 ハ長調(Praeludium in C-Dur)

ブルーンス(Nicolaus Bruhns, 1665-1697):〈前奏曲 ホ短調(Praeludium in e-moll)〉
半音階進行が強烈でノックアウトです🙃

ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(Johann Sebastian Bach, 1685-1750):〈前奏曲 ハ長調(Praeludium in C-Dur)〉(BWV 531)
足鍵盤の低音~しびれますね😉

ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(Johann Sebastian Bach, 1685-1750):〈トッカータ ト短調(Toccata in d-moll)〉(BWV 915)

コラール・ファンタジア

デューベン(Andreas Düben, 1597-1622):〈コラール・ファンタジア(Choralfantasie über Wo Gott der Herr nicht bei uns haelt)〉

トゥンダー(Franz Tunder, 1614-1667):〈コラール・ファンタジア(Choralfantasie über Was kann uns kommen an für Noth)〉

ラインケン(Johann Adam Reincken, 1643-1722):〈コラール・ファンタジア(Choralphantasie: An Wasserflüssen Babylon)〉

ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(Johann Sebastian Bach, 1685-1750):〈コラール・ファンタジア(Choralphantasie: An Wasserflüssen Babylon bach)〉(BWV 653)

ヘキサコルド・ファンタジア

ジョン・ブル(John Bull, 1562-1628):〈音階的ヘキサコルド・ファンタジア(Chromatic Fantasia on Ut Re Mi Fa Sol La)〉

ウィリアム・バード(William Byrd, 1543-1623):〈ヘキサコルド・ファンタジア(Fantasia. ut, re, mi, fa, sol, la)〉

スウェーリンク(Jan Pieterszoon Sweelinck, 1562-1621):〈ヘキサコルド・ファンタジア(Fantasia sopra ut, re, mi, fa, sol, la)〉(SwWV 263)

フローベルガー(Johann Jakob Froberger, 1616-1667):〈ヘキサコルド・ファンタジア(Fantasia sopra ut, re, mi, fa, sol, la)〉(FbWV 201)

2016年10月30日

音楽を愛する皆さま、温かいお言葉かけを下さり、ありがとうございます。

音楽の楽しみや味わいを分かち合いたいと続けてまいりました。短い文に多くを書くため、専門用語が多くなり、リクエストにより、文献紹介をしてまいり、難しい印象になりそうですが、お気になさらず、お楽しみください。気さくに楽しんでおりますから、ご感想など大歓迎です。皆さまのお役に立つと思うことを書きたいと願い、音楽の歴史を時代を進めてまいり、後からも振り返ることができますよう、タイムラインでアーカイブしております。

音楽の意義は音による共感と感じております。音楽の感激が生まれる根源を知りたいという、好奇心や探求心から、文化から人間感情や社会通念を知り、味わいや楽しみを重ね、考えの深さや広がりになると感じております。文化の源流から伝統と発想の変遷を系譜で辿ることにより、文化の意義に接して、歴史の事実に即して、多くの観点を取り入れ、自由に組み立て、物事を考えられるように努めております。歴史に流れにより自然に進みます。

古典音楽は楽譜で伝わりますから、あらゆる音楽を味わいながら、あらゆる発想を汲みながら、感覚を研ぎ澄ませて、楽譜と向き合いながら、音楽が向こうから語りかけてくるような自然な感覚を追い求めることができます。音楽を弾くときと同じように聴くときも、あらゆる地域や時代の名作から、新しい発想が生まれた瞬間を体験して、真意を見つけ、自然と親しみ、感覚が鋭くなり、語彙が豊かになり、弾き手と聴き手がつながると思います。

例えば、リューティストやクラヴサニストは、フランス語の語感から不均等音notes inégalesを発想して、ある音を長く、別の音を短くして、音楽に揺らぎを与え、優雅なイントネーションにより、親密に語りかけてきます。ドニ・ゴーティエやルイ・クープランの音楽は、大らかでハートフルでチャーミングです。機械的な比率の発想ではなく、心地よく感じられる微妙な間合いを感覚で調え、自然に語りかける音楽が生まれてヒューマンです。

皆さまが、いつでも美しい音楽で喜びに包み込まれ、人類の面白さと奥深さを共感できますよう、地球のあらゆる地域とあらゆる時代の音楽をタイムラインでシェアーしてまいります。今後とも宜しくお願い申し上げます。

ドニ・ゴーティエの〈組曲 第10番 イ短調(Suite en la)〉より〈[定量譜によらない]前奏曲(Prélude [non mesuré])〉と後続する〈アルマンド(Orphée)〉(1652年・La Rhétorique des Dieux)

Denis Gaultier (1652). La Rhétorique des Dieux

ドニ・ゴーティエの〈[定量譜によらない]前奏曲(Prélude [non mesuré])〉(32)に〈アルマンド(Phaeton foudroy)〉(44)と〈クーラント(Minerve)〉(48)が同調(ニ長調)で後続して組曲をなします。《リュート・タブラチュア集(Livre de tablature des pièces de luth)》(1672年)のページです。リュートで奏された舞曲は、クラヴサン楽派など発想の源泉となり、組曲 suite の元祖になりました。ルイ・クープランやドニ・ゴーティエの親しみに溢れた音楽は野に咲く花のようです。鍵盤付きリュート「クラヴサン」から、フローベルガー・ヴェックマン・ブクステフーデ・バッハに到ります。激しく脱線しましたが、心に染み入る音楽でした。昨日は音楽の構造から、音の高さと長さに帰着するとしましたが、真逆の観点から、楽器の音色や仕組により異なる道を辿ることも確かですね。

Livre de tablature des pièces de luth de Mr Gaultier Sr de Nèüe, et de Mr Gaultier son cousin, sur plusieurs différents modes avec quelques reigles qu'il faut observer pour le bien toucher. Gravé par Richer (1672)
Lionel de La Laurencie (1928). Les luthistes, Paris: Henri Laurens.

ルイ・クープランの〈定量譜によらない前奏曲 ヘ長調 第13番(Prélude non mesuré en fa (majeur))〉

ボーアン手稿(1658年頃・F-Pn Rés. Vm7 675, 18r-19r)で伝わります。メッサンジョーやゴーティエらのリュートによる前奏曲(prélude)や組曲(suite)の形式、和音を分割する断続様式(style brisé)、短装飾音(agrément)などをクラヴサンに取り入れました。また、1652年にパリを訪れたフローベルガーと会い、シャンボニエールやダングルベールとクラヴサン楽派をなしました。初期クラヴサン音楽は明快で独特な情感を伴います。

Manuscrit Bauyn
Les préludes non mesurés de Louis Couperin

〈シャコンヌ へ長調(Chaconne en fa majeur)〉(F-Pn Rés.Vm7 675, 48v)
〈パッサカーユ ハ長調(Passacaille en ut majeur)〉《ヴェルサイユ》(F-Pn Rés.Vm7 675, 24v-25r)
〈シャコンヌ[またはパッサカーユ]ト短調(Passacaille [ou Chaconne] en sol mineur)〉(F-Pn Rés.Vm7 675, 61r-62v)

〈定量譜によらない前奏曲 ト短調 第3番(Prélude non mesuré en sol mineur)〉
Changement de mouvementの手前から曲の終りまで
ボーアン手稿 (1658年頃・Paris, Bibliothèque nationale de France, Rés. Vm7 675, 6r-7v)

〈フローベルガー氏を模倣した前奏曲(Prélude à l'imitation de M. Froberger)〉

〈組曲 ニ長調(Suite en ré)〉(Prelude – Gaillarde – Chaconne)

Manuscrit Bauyn 47-49頁

2017年4月14日

シルヴィウス・レオポルド・ヴァイス:〈リュート組曲 変ロ長調〉(1725年・WeissSW 4.1)

シルヴィウス・レオポルド・ヴァイス:〈リュート組曲 変ロ長調〉(1725年・WeissSW 10.1)

2017年5月25日

ルイ・クープランの〈非定量的な前奏曲 ハ長調(Prélude non mesuré en C)〉(1676年頃・Bauyn手稿・F-Pn Rés.Vm7 675, 14r-15r)

そして、ヒューマンでチャーミングなフランスのクラヴサン音楽の歴史を楽しくたどることにいたしました。ルイ・クープランはモダンな構築性とユニークな天才性を兼ね備えた音楽家でした。特に小節線のない自由な前奏曲では、不協和音やセブンスを自在に用い、最小限の装飾により音楽の流れや和声の動きがパッション放たれるように聴こえるからです。

リューティストたち、メッサンジョ、老ゴーティエ、ドニ・ゴーティエ、デュフォー、ガロ、ムートンに近い音楽性です。非定量的な前奏曲(Prélude non mesuré)でブリゼやイネガルなどリュート奏法を駆使して、持続低音から安定させました。トンボー、ルネサンスの舞曲(パヴァーヌ・ガイヤルド・ブランル・カナリー)、変奏(シャコンヌ・パッサカーユ)、バロックの組曲(アルマンド・クーラント・サラバンド・ジーグ)、ギャラントリー(メヌエット・ガボット)を取り入れました。

しかも、フレスコバルディ門下フローベルガーのトッカータなどで使われるトレモロやティラータなどの装飾を伴い、転調を次第に急速にして、主調が見つかると、穏やかに下降してゆき、楽曲に疎密や緩急が生まれており、優雅な旋律が紡がれます。1626年にショーム・アン・ブリーで生まれ、1651年にシャンボニエールに見い出され、パリでクープラン一族が活躍する礎を築き、1653年にサン・ジェルヴェ教会のオルガニストになり、ヴィオールにも長けていましたが、1661年に亡くなりました。

ルイ・クープランの〈非定量的な前奏曲 ヘ長調(Prélude non mesuré en fa)〉(F-Pn Rés.Vm7 675, 17r-18r)

F-Esが印象的で途中に定量譜で書かれた12/8拍子のフガートを挟み込んだ序曲 Overtureのように三部構成です。

ルイ・クープランの組曲 ニ短調 Suite en ré mineur

Prélude [1r] – Allemande [29r] – Courante I [30v] – Courante II [32v] – Sarabande I [34v] – Sarabande II [34v] – Sarabande III [33v] – Canaries [35r] – Volte [36r] – La Pastourelle [36r] – Chaconne [36v]

ルイ・クープランには音楽そのものだけで著作がないですが、小節線のない前奏曲は、リュートで調弦を確認するため発達して、メッサンジョーや老ゴーティエが古い例です。ドミナントやセブンスを多く使い、即興らしい部分では非和声音や経過和声を巧みに用いられます。

分散和音から旋律断片が生まれたり、初めは即興で弾かれましたが、素晴らしいために記譜された経緯から、自然な流れを重んじて非定量譜で書かれました。ニコラ・ルベーグ(1677年)やダングルベール(1689年)のクラヴサン曲集では定量譜で詳細に記録されています。

マルシャン・クレランボー・ルルー・ラモーたちに受け継がれ、甥のフランソワ・クープランの《クラヴサン奏法(L'Art de toucher le clavecin)》(1717年)では任意のイマジネーション(l'imagination se livre à tout)による自由な作品(une composition libre)と書いています。
リューティストたち、クラヴサニストたちは、前奏曲に後続して舞曲たちやトンボーを演奏しました。そして、最後にシャコンヌやパッサカーユが演奏されることもありました。舞曲たち(piéces)は自由に同じ調で組み合わされた演奏習慣から組曲(suite)が形づくられてゆきました。

調弦の規則(Accord par Unissons et par Octaves)が初めに書かれ、タブラチュアには小節線がなく、ルイ・クープランと同じようにスラーが書かれて連なりが示されています。低弦 a///から和声を組み立てる使い方も似ています。

Pierre Ballard (1638). Tablature de luth de differens autheurs, sur les accords nouveaux: 2-3. Prélude en fa mineur [CLFMes N°19]

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