いつもありがとうございます。李迪は南宋の画院にて花鳥を得意としました。鳥獣の眼差しも温かみがあり、高潔で雅趣を漂わせております。
朝に咲いて夕に色づく、芙蓉の生命力や蕾がお花になり散りゆく命の移ろいが雙幅に写され、芙蓉の優美さや柔和さが描かれ雅味があります。
漢詩は直接表現を避け、芙蓉は女性の白い肌の清楚さ、酔芙蓉は頬が紅潮する様を示し、絹に描かれた花に人らしいぬくもりが感じられます。
白楽天(772-846)の〈長恨歌〉(806年)の一節「芙蓉如面柳如眉」で楊貴妃の顔が芙蓉の花、眉は柳にたとえられましたことが思い当たります。
北宋が瓦解した靖康の変から半世紀経ち、南宋が文化復興に勤しみ、宮廷所蔵目録(宣和画譜)が撰修されました。ありがとうございました。
李迪:〈紅白芙蓉圖〉左幅 絹本着色 25.2×25.5㎝ 東京國立博物館 南宋·慶元3年 1197年
落款「慶元丁巳歳李迪畫」
文人は書画に接して賛からも読み取りました。中華文明の特徴は、故事成語など、事物や事件に譬えて人格や情感を表すことによく表れます。
北宋の蘇軾(1037-1101)は「書鄢陵王主簿所画折枝」(1087年)で「詩画本一律(漢詩と書画は本源では一つの原理である)」と記しました。
清代末期には四絶(詩・書・画・篆刻)が一つの人格の中で調和するところまで到達しました。故に書画は高潔で雅趣を漂わせております。