漢字のユニークさを探究!新たなシリーズ始まりました!漢字の構造を字形、字義、字音から、漢語の系譜を起源からたどります!字幕もぜひご覧くださいませ!暖かいお言葉かけを下さりましたら、SNSでシェアー下さりましたら、今後の制作の励みになります。KF-Ars Sinica、KF-Scholaと併せて、何卒よろしくお願い申し上げます。
2021年6月18日
皆さま、こんにちは!
KF-Ars Sinica(系譜でたどる中華文化)、漢字のユニークさを探求してまいりましょうというシリーズが続いておりまして、
前回は大変、大きな動画を出してしまいましたけれども、お楽しみ下さりましたら嬉しいです。
今回も、漢字の六書について、概念だけではなく、
実際の甲骨金文にまで遡って、六書が機能しているのかを確認してみたいと思いまして用意して参ったんですよ。
どうしてかといいましたら、
KF-Ars Sinicaは実物の感動を大切にしたい!
実物の重みは、やはり歴史の重みということで、一次資料にこだわっておりまして、
漢字の一次資料とは何かといいましたら、
甲骨金文でしょうということで、
字源はやはり、字の源ですし、語源は言葉の源でありますから、
そういった形で「言語と文字のデュアリティ」を大切にしながら見てまいりたいと思うんですよ。
今回も大変な旅になると思いますので、サクサクいきたいと思うんですけど。
前置きは、さておいて、
《説文解字》にある前回見ました六書の順番通りに「指事」からいきましょう!
先ず、《説文解字》にありました例「上」「下」ありますね。ここに用意したんですよ!
やはり、「上」「下」は、もう見ての通りじゃないかと、
本当に「上」「下」でその通りにある。
これ「上」と「下」で微妙に長さが違う!
これは一緒でまあ分からなくなってきちゃったから、
こういった形で「上」と「下」で我々が使う文字(楷書)に近いです。
この横棒がない形(小篆)もありますね。
これで篆書ですが、まあ、こういった形で見たら分かるということで、
ちなみに語源に関しては、ちゃんとここに書いておきましたから、まあ見て頂ければと思いますけれども(「上/丄」*djaŋs, *daŋʔ-s < 漢藏*s-tyaŋ、「下/丅」*ɡraːs, *m-ɡˤraʔ-s < 漢藏*(k/g)la-k/y/t)。
指事字に関して、よく言われるのが、
こういった数字も「一」「二」「三」「亖」、「五」「六」「七」「八」に関しても、
これも記号だということで、とにかく「一」「二」「三」「亖」に関しては、一本ずつ増えていくということで、
「一」のさまを象形したともいうけれども、
結局、符号ですよね。 そして、この後、「五」は真ん中にバッテン、もう「六」は逆V字、後でニョキッとしている!
「七」も十字、「八」も二本という形で分かりやすいんですよ。
この「九」「百」「千」「萬」に関しては、
仮借で指事ではございませんけれども、
この「十」に関しては、これは指事なんですよね。
こういった形で「十」からは、面白いことに二本にして「廿」と「十」が二本まとまっている。
それで三本にして「卅」とか、四本で「卌」、
五十の場合は、「五」と「十」が合文の形、合体したような形で書かれていて、
「六十」もそうですね、「六」と「十」で合体してるんです!
「七十」は分かりにくいですが、よく見ると、ここの部分が「七」で上にくっついて、本当に「十」だということでちょっと長くて分かりにくい!
「八十」に関しては、めり込んで入ってます!こちらが甲骨文で、こちらが金文ですけども、逆にめり込んでいる形もありますけれども、
こういった形で合文と!合体しているように見えてまいるんですけれども、
戻ってみますね。
指事字とは、今みたいに上下とか、
もしくは指示の符号みたいなものですね。
あと「𠄢/亘」*-, *[ɢ]ʷˤar, s-[q]ʷarという字がありますけれども、本当はグルグル巻きの形をしたマークであったり、
そういった符号字も、伝統的には指事字の中に含まれていまして、
そして、合文という状態ですね。
二つのマークが混ざった形で微妙なところなんですね。
二つの意味を合わせて会意ともいえて、
この指事に関して、こういった「右」*ɢʷɯʔ, *[ɢ]ʷəʔ(< 漢蔵*g-(y/r)a)という字がありまして、
こちら右手を象った「又」*ɢʷɯs, *[ɢ]ʷəʔ-sと!
「左」*ʔsaːlʔ, *tsˤa[j]ʔ(< 漢藏*b(w)ay)の場合は、左手を象った「𠂇」*[ʔsaːls], *[tsˤaj-s]とも、考えられるけれども、
「右」「左」の位置関係において示していると言えば、 指事字ですよ!
ですから、先ほどの「一」「二」「三」「亖」の象形といえば、象形字ですけれども、
これも右手、左手といえば、象形字ですけれども、
これも位置で示しているということで、指事字ともなります!
これらは、今一番上の段が、甲骨でこちらが金文なんですけど、
見てみますと、大体こういった形で引き継がれています。
そして、「右」「左」がやはりこれは難しいですよ!
甲骨文は左右が反転することも、よくありますから、分かんなくなっちゃうんですよね。
「右」と「左」どっちか区別をつけなきゃいけないということで、
しっかり、西周金文では、大体「口」をつけて、
それで更にこれでも分からないと、そうしたら西周晩期に工具の「工」で「左」ということで固定して、
それで我々が使ってる文字は、「右」「左」はこれの子孫ということで分かるんですよね。
ですから、この「口」に関して言うと、これは指示記号、もしくは飾符、飾りとも考えられると微妙なところですが、
上下とか、数字に関して、指事字の中でも、抽象的な意味を持っている「抽象字」という概念があって、
概念を符号化したものなり、位置関係で書いたり、具体的なものの象形というより、抽象的なものの形で見せていると、「抽象字」と裘錫圭さんは《文字学概要》で言っていまして、
そして今、見てきたのは、これは「独体指示」といいまして、
一つの形でしたが、更にこの手「又」のどこの部分かを「ここだよ!」と符号をつける、「指示符号」と言いますが、
この「指示符号」の場合は同音異義語ですから、紛らわしいですけど、
この「指事」ではなくて、場所を「指示」する、示すの方の指示ですね。
指し示すということで、ここによく見ると丸が付いていたりして、
ここに一本棒が入っている。
これは何か!?と言いますと、
「厷/肱」*kʷɯːŋ, *[k]ʷˤəŋ(< 南亞*koŋ)と考えられる。
何故なら、手の根本、肘の所だよ!ここだよと丸とか、棒で示していて、
「合体指事」と言いまして、
指示符号を付けていることが多いんじゃないかと!
例えば、同じ発想で「大」*daːds, *lˤat-s(< 壯侗*ʰlaːjᴬ)を見ていきたいと思いますけれども、
この「大」という字は人が立ってる形、甲骨金文でもそうですけれども、はっきりしていますね!
こちらの「大」はユーモラスですけれども(笑)
それでこれに関して、例えば、その頭に一本棒が入ってんですよね。
これ「夫」*pa, *p(r)a( < 漢蔵*p/ba、藏語ཕ།, pha、緬甸ဘ, bha、庫基-欽語*paa、那加*pa、唐庫爾*ba、克倫*phaᴬ、父*baʔ, *N-paʔ)という字ですが、
また、仮借されて、「夫れ」(チベット語 ཕ, pha、彝緬祖語*m-ba、彼*pralʔ, *pajʔ)という意味で文頭に使われたりもしますが、
この字は「大」の頭に一本棒が入って、やはりこれは指示符号ではということでありますね。
ちなみに今、指事、字源に関して、申し上げてるんですけども、語源に関して、話すと長くなってしまうから、字幕の方に表示されますのでお楽しみに観ていただければと思います。
そして、今度は「天」に行きますと、
頭の上に棒が二本入ってる!
もしくは、一本入った上に更に一つ四角が付いている!これは何だと!?
やはり、これも指事符号らしいと、
これ見ると「上」という字に近い、
もしくはこの字は□は「丁」という字がありますね。「甲乙丙丁」の「丁」は(甲骨金文で)こういう形でした。
だから、「上」と「大」もしくは「丁」と「大」が合成されていると思いたいんですけども、
これは音韻学の方からいきますと、
漢字の字音の方の問題ですね。
今度、この「天」はもともと鄭張尚芳, Baxter-Sagartで*qʰl'iːn, *l̥ˤi[n]でしたから、やはりL-typeじゃないかと!T-typeじゃないと!tと思われていたけれども、これは l であったかとBaxter-Sagartの復元になっているわけですね。
そうするとこれ私、見つけちゃったんですけれども、やはりナガ祖語の *luːmとか、チェパン語 लाङ्का, laŋ.kaとアノン語のmuʔ laŋのlaŋの部分とか、ジンポー語のlă³¹ mu³¹、
それらは皆「空」という意味を持っていたり、もしくは「天」ですよ!本当にheavenという意味がある!
そういう言葉と語源的につながりがあると、全部 lがある!
それでちなみに白語はheinl, /xẽ⁵⁵/という音なんですよね。
これはどうもこの L-typeの上古漢語で、
今から3000年くらい前にあったところから、少し時間が経っていくと、
それから1000年ほど経ち、今から2000年くらいになったときには、
上古漢語でも、後期上古漢語でlがxになってきて、xからtになってきているんですよ。
その移行する期間、その辺りから漢語から仮借された可能性はあると考えられるんですけれども。
インドのことを「天竺」*qʰl'iːn tuɡ, *l̥ˤi[n] [tuk]と言いますけど、
これはペルシャ語の古い形の*Hinduka-(古ペルシア語 𐏃𐎡𐎯𐎢𐏁, hinduš)を音写していると、
特に大事なのが最初のhの部分ですね。
hに「天」を当てている!だから、これは後期上古漢語辺りでxという音を持ち、l から h になり、更にtに行く過程で音写された可能性があるとか、
そういった外的に考えていくと、やはりこの「天」はL-typeだった可能性があって、(更に楚簡の通仮関係などからも確かめられ、)
lの音から、hを経て、tになった。
ところが、やはり《説文解字》は、後期上古漢語あたりに書かれたものです。
今から2000年弱前ですが、紀元後少し経ったくらいで、
そこでは、この「天」という字は「顚也,至高無上。从一、大。」と書かれていまして、
その「顛」*tiːn, *tˤi[n]は、山の頂という意味でして、「頂」*teːŋʔ, *tˤeŋʔにも、「丁」*teːŋ, *tˤeŋが入って、それに「頁」ですよね。
それらはみんなT-typeですよね。
それでちなみにこの「上」*djaŋs, *daŋʔ-sという字が、ここにありますけど、 やはり、d とか t に近い音ですね。
今、言った「頂」*teːŋʔ, *tˤeŋʔも、ここにありますけれども、
本当に「顛」*tiːn, *tˤi[n]もここにありますね。
これらの音だったんですけども、これと、この字と「天」が《説文解字》で結び付けられるんですよ。
だから、それは意味的な意味で結び付けたかと!
音韻学的な再構の方はきちっとされてますから、
他の音韻的な対応などかなり精密な議論の中で出てきてるから、
やはり《説文解字》が編纂されたぐらいの時にたまたま意味も近いし(押韻するし)、
この上とか、頂とか、上がる意味から、「天」は近いですから、
でも、どっちかと言ったら、これはやはり、指示記号という考える方がいいだろうと。
人の頭より上だよという符号かと!
これもそうですね。そういった形、もしくは、その「天」が擬人化されて、こうした形で象られたと考える方が、音韻学と一致すると面白い話が一つ見れてこれました。
こうした、やはり、字源を考えていく上でも、元々この文字が持っていた音は、非常に大事でして(もしそのような考察がなければ、「上」「丁」の部品を持つと誤認してしまいますから)、
それでそれを含めて矛盾なく全部説明して考えることが大事でして、やはり字形からだけでいくと、これやはり、「上」という字か、もしくはこれ「丁」という字をここに持っていますから、
関係あるんじゃないか、しかも、語源も関係があるじゃないかと、こちらに結び付けたい気持ちは分かりますが、
やはり、L-typeだろうと、「天」はlだろうと、「天」*qʰl'iːn, *l̥ˤi[n]だということで、
更に他の漢蔵語族の他の言語でも、「空」とか、「天国」を意味する言葉と語源、そちらの音が可能性が高いということで、
後の時代にlから、hを経て、t に行ったと見てまいりました。
それでこちらの「黑」*hmlɯːɡ, *m̥ˤəkですが、
文字学者の中でも、もう本当に議論が割れていまして、もう大変だったんですよ。
これは元々、何(の形)を意味してるのか分からない!
私はこれを見て行ったら、「大」という字に対して、
これやはり頭の方に丸が付いていると! これもそうですけれども!
特にこの甲骨文においては、皆この形で丸が付いている!
それで西周中期の金文から、頭のところに真ん中に棒が入るようになって、
しかも、その中に点々があるようになり、篆書に行き、「火(灬)」まで付いた形になり、
それでこの足の部分に下の方に煤「炎」と関係あり、その上に煤が貯まる窓「𡆧」が何とか、(《説文解字》「火所熏之色也。从炎,上出𡆧。𡆧,古窻字。凡黑之屬皆从黑」)と言われてしまうけれども、
これは甲骨文から行くと、明らかに「大」という字に丸をつけている。
先ほども申し上げました。指示符号を付けるときには、一本棒か、丸を付けるというような方法がある。
これらは一本棒が足されて、位置を示したり、色々字形を発展させて区別してる。
これを見ると、やはり、人の頭に丸が付いていると考えると、
やはり、人間の頭が黒いから、「黒」じゃないかということ、私は思ったんですよ!
本当にシンプルだと!その方が発想として、新説かと!
それで、はっきりこの大という字に丸があり、指示符号的にもしくは頭の形を模している形、この「黒」かと人は、初めてかもしれません!
本当にすごいことですが、少し後の西周金文になってしまうと、頭の部分が田んぼのような形になって、
果実の「果」という字はありますが、頭「田」に近い形になって、
しかも、その中に点々が入るようになって、
それはやはりにゴロッとしたようなものを象形する形が多くて、
そうすると今度は頭そのものを(象形する形に変化したと)いうことで、
どちらにしても、やはり、頭の黒さから、髪の毛黒いから、「黒」といった可能性はあるんじゃないかと、
非常にシンプルですが、中々これは今まで誰も言ってなくて面白かったですよね(龍宇純が「田」の形に四つの点を打ったのは、金文で「鬼」の頭の形と合わせて考えていましたが、甲骨文で指示符号であることは新説です)。
その後にこの上が窓「𡆧」みたいな形になって、それこういった形になって、「火」になって、
どんどん字形が訛ってしまう、
それでちなみにこの「黑」から、やはり更に「土」つけると「墨」*mlɯːɡ, *C.mˤəkで「黑」*hmlɯːɡ, *m̥ˤəkですから、やはり導かれるんですね。漢蔵祖語*s-ma(ŋ/k)ですね。
そういうことで、もう一つ面白いのは、やはり、日本語で使う墨か、もしくは炭素の「炭」、
あれらはどうもやはりこの「墨」*mlɯːɡ, *C.mˤək < 漢蔵祖語*s-ma(ŋ/k)から来ている可能性はある!
上古漢語から借りて、日琉祖語は*sumiで殆ど変わっていないけれども、それにも入ったじゃないかなと!
今までは燃えかすだから、済んだから、「済み」から来てる可能性あると言われているけれども、
これは(この間の「筆」と同じく、)上古漢語から、日本語に入った可能性も否定できないと一つ提案ができるじゃないかということで、
ちなみに、この間、「文」*mɯn, *mə[n]に関しても、面白い提案があるとお話ししましたけれども。
Axel Schsslerは、「煤」*mɯː, *mˤə(彝緬祖語* ʔ-mu²)がありまして、これもやはり今話した「墨」*mlɯːɡ, *C.mˤəkや「黑」*hmlɯːɡ, *m̥ˤəkと一緒で、そこからきた可能性がある言葉で、
それに「煤」*mɯː, *mˤəに*-n がついて、名詞化して「文」*mɯn, *mə[n]にいった可能性があると考えましたが、(私はあまりにも「文」が書くことに特化しすぎて、字源とされる文身と合わないことから従いませんでした。)
ちょっと脱線をしてしまいましたが、 前々回の動画の宣伝も兼ねて、そんな話がありましたけれども、
そういった形で指事字に関しては、こういった元の形から、何か棒を足したり、丸の付けたりすることにより、(字形が発展してくるんじゃないかなということで見えてきて、
もう一つ、面白いことが、この指事字でよく言われるのは、
この「木」*moːɡ, *C.mˤok(語源は彝緬祖語*ʔmuk、西夏語mur、ボド語多mura、リンブー語siŋ mut、mukkumbaと関係?)から発展する、
「木」の元の所が肥えて根元だから、「本」*pɯːnʔ, *C.pˤə[n]ʔ(< 漢藏*(b/p)ul、チン語*ɓul、タンクル語*pal、ナガ語pul 、ジンポー語phun)になったり、
それで今度は「末」*maːd, *mˤat(語源は「未」*mɯds, *m[ə]t-s、カレン語*məŋᴮ、リス語mɔ²¹、ツジア語mu³と関係?)では、ここの部分ですよね。
一本棒が小さな棒が入っている基本形に関して、
それで更に真ん中側のようにここを黒くして、塗りつぶした「朱」*tjo, *to( < ベト=ムオン祖語*tɔh、越南語「𣠶」đỏ、ムオン語tó、「赭」*tjaːʔ, *tAʔ)という字は、これに更に「木」をつけて、切り株の「株」*to, *tro < モン=クメール祖語*ɟhooʔ、モン語ဆု, hcu.、クメール語ឈើ, chəəという字になっていますよね(初文「朱」から「株」に繁化されています)。
これらの方法も、指示字と言われてますよね。
元の字形を変形してゆくことにより、
これらの音は全然違うんですよ。
こういった場合は、指示符号によって変化させて作った漢字である可能性が高いということで、
大体指事がどういうものなのか、実際に見ていけたんじゃないかなと思います。
指事字の中には、今言ったみたいに符号をつけることによって変形していきましたけれども、
また、「変体指事」といい、今まで来た「独体指事」、その次に「合体指事」でくっつけ合わせた。更に字形自体を変えて、今来てますけれども、
今度は人が大きく立っている「大」を逆にしちゃうことによって、「屰」*ŋraɡ, *ŋrak < 漢蔵祖語*s-ŋ(y)ayという字はできてるんですよ。 (「逆」の)之繞「辶」をとってしまった部分「屰」なんですけど(甲骨文でも「彳」「止」が付いた形も既にみられ)、それが元の形だったわけですけども、
初文ですけれども、それは「大」という人の形を逆にした「屰」!
それは逆になったり、それで人に地面を一本書き加えた「立」*rɯb, *k.rəp < 漢蔵祖語*g-r(y)apという字になっていうことで、かなり楷書でも近い形で残っているから想像できると思うんですけれども、
(「之(止+一)」と同じように)一本、下に地面が加えられていて、
まあ地面の上に立っている象形といえば、そうで微妙なところですが、
そういった字形を変体指事と言って、それを裘錫圭さんは《文字学概要》で「象事字」と言いますね。「事を象る字」と言って、微妙なところでして、
指事と象形の間であります(抽象性があると指事、具体性があると象形となります)。
更に指事字の中で「大」の脇の下のところに(左右に)点点を付けて、腋だよと示して、「亦」*laːɡ, *ɢ(r)Akという字になって、
手「又」に一本棒で「寸」*sʰuːns, *[tsʰ]ˤu[n]-sになったりとか(「尊」*ʔsuːn, *[ts]ˤu[n]と関係があり、両手「廾」の省略とも考えられ、また「付」*pos, *p(r)o-sの部品でして)、
「口」*kʰoːʔ, *kʰˤ(r)oʔ < 漢蔵祖語*ku(w)という字がありますけども、口の中に点「丶」を一つ入れyr、「甘」*kaːm, *[k]ˤ[a]m < 漢蔵祖語*s-klumという字にしたりとか、
あとは一本棒を入れて、「曰」*ɢʷad, *[ɢ]ʷat < 漢蔵祖語*grwas という字にしたりとか、
更にそれをひっくり返して、「今」*krɯm, *[k]r[ə]m < 南亜祖語*ku/koという字など、
結構そういった形で色んな漢字を変形させることによって、
色んな文字ができてきて、指事という方法の中にも、
実は結構色んな種類があって、
大きく分けて独体、合体、変体と三つを見てこれたと思うんですけども、
特に合体。もしくは、変体指事は、裘錫圭さんが《文字学概要》で、先ほど申し上げたよう、「象物字」のような形で、象形といえば、象形ですよ。
だから、微妙なところであるんですけども、
それはどの程度、具体性があるのかでして、ただ符号である所か、もしくはそれがはっきりした形で、ものとして物体として捉えられるか、
それは本当に微妙な境界線ですよ!
まあ、「上」と「下」は「上」の様を象ったといえば、それ象形としても取られてしまうこと(これは屁理屈に近いですが、)
その微妙な指事と象形にはグレーゾーンがありまして、
今度、象形の方に行ってみたいですけれども、
この象形は、もう見ての通り、
もう本当に小学校1年生のような漢字のお勉強になっちゃう感じでありますけれども、
この「日」「月」も、《説文解字》に挙がっていた例ですけど、
それとあと「山」「川」。やはり見ての通り、そのままだということで面白いんですよね!
「日」*njiɡ, *C.nik(< 漢藏*s-nəy)や「月」*ŋod, *[ŋ]ʷat(< 漢藏*s-ŋʷ(y)a-t)に関して、よく見ると、周りの形を象って、これは三日月ですよね!
やはり、月の形であって、満月だと、やはりお日さまとお月さまが混同されてしまうから、こういう形になったんでしょうね!どっちかと言ったら、欠けている方が月だと!
これで「月」の方は、本当に丸ですけれども、
これは「圓」という字の初文、circleの「圓」と間違えちゃう可能性があるということで、
やはり中に天体の「日」「月」は点があるんですよね。
こういうふうに、まあこれもすごいシンプルであると思いながら、システミカルに象形されていると言えると思うんですよ!
本当にこれは甲骨文特有の都合で骨に刻んでいくときに直線的になってますから、
これ「圓」が少し六角形みたいになっていますよね。
だけれども、金文で本当に丸い!
これはやはり筆で書いたような形で、甲骨文は一生懸命、丸く刻みますが、
こんな形になっています!ということでありますけれども、
「日」に関しても、「月」に関しても、こうした形であります。
あと「山」*sreːn, *s-ŋrarに関しても、やはり、山脈みたいなんですよね!
本当は一つの山でないですね!よく見ますとこれは三つの峰が見える形である程度で同じ形で甲骨金文で来ますが(大体多くは三つに象形されます)。
象形をしているということが見えて、
「川」*kʰjon, *t.l̥u[n]に関しても、(両方に)川岸があって、中に水が流れていることはわかるんですよ。
三本線あるけれども、これは全部「水」じゃなくて、やはり中の「水」だと!
それがはっきり分かるのは、ここの中でも、これだけ取り出すと「水」ということで面白いと(ちなみに「州」という字は中州があります)、
象形に関しては、今でも「虎」とか、「馬」も、このシリーズの中で出てまいりましたし、
色々と見えてこれたので、
次に漢字の中で最も多い、形声字に行きますが、
こちらで《説文解字》に上がってる例を見たんですよね。長江と黄河ですよね。
《説文解字》の例示する字は「上下」とか、「日月」とか、今度は長江と黄河で来たかと!
対称性が高いと考えられますけれども、
これを見ますと、形声字の特徴は、意符と声符があるんですよ。
《説文解字》の中では、「何とかに従いて、何とかの声(从□■聲)」と書いてあるんですよね。
そう見ますと、その意符の方はどっちか言いますと、
「水」の方ですね。そしてその漢字の音を表している部分は、こっちの「工」の方なんですね。
基本的には小篆を作った時には、意符は左の方に持ってこられるんですよ。
もしくは、下の方にが多い。中にが例外はありますけれども、大体そう!
でも、甲骨金文の時代には、あまりそれの方とはなく、どっちでも自由だった。
まあ、でも、基本的には「水」は左に来ているものが多かったかな。
そして、こうなってますね。あと下に水がくる場合もありましたね。戦国文字の中には、楚簡や古璽の中にはありましたけれども、
まあ、こういった形で意符と声符で「江」*kroːŋ, *kˤroŋの語源は後でのお楽しみということで、
工具の「工」*koːŋ, *kˤoŋは、rが入っていない!
「江」*kroːŋ, *kˤroŋに対して、この部分だけは「工」*koːŋ, *kˤoŋです。
これはどうも、やはり、古モン語kloñから来てる可能性があり、ビルマ語ခိုင်း, hkuing:の方にも借用されて関係あるという説があって、 (「江」と「工」は)全然語源が違うんですよね。
モン語kloñやビルマ語ခိုင်း, hkuing:は「~させる」という意味でしたり、
この「工」という字は、「仕事」とか、そういう意味があるんですよね。
だから、そっちの方で全然、長江の「江」とは意味が違う!
音だけを借りてきたことが分かります。
「河」の方は語源の方から行ってしまいますと、この黄河の「河」は、かなり諸説があって紛糾してるんですけども、
先ず、この漢字の音(上古漢語)が*ɡaːl, *[C.ɡ]ˤajでして、
Baxter-Sagartの方は分からない子音Cが最初についている!鄭張尚芳は*ɡaːlですけど、
これはどうも蒙古祖語*gowlから来てる可能性があるとか、
色んな説があって一定しないところですが、
それでちなみにこの黄河の「水」で甲骨文においては、「水」は点々は先ほど「川」を見てもそうでしたけども、岸があって中には1本しか棒がなかった。
それでも「水」でしたが、これもそうですね。一本しか書かれていなくても、こうやって点を書いてくれるのもあります。
「水」は大体は意符の方に来ると、まあ、平たく言えば、偏の方に来ると、一本の棒に省略されることが多いんですよね。
これに対して、これははっきり残っているのは、
この「可」という字は、可能の「可」ですけど、
やはり、それに仮借されていますね。
「可」*kʰaːlʔ, *[k]ʰˤa[j]ʔという音ですね。
これで元々これらは、人が荷物を背負っている形していて、
こちらとはっきり見える。 それは「荷」*ɡaːlʔ, *[ɡ]ˤajʔでしたが、
「荷」*ɡaːlʔ, *[ɡ]ˤajʔという字です。
こうした草冠がついて、更に人偏が付いてますよね。
「何」*ɡaːl, *[ɡ]ˤaj(< 漢蔵祖語*ka、チベット語ག་ན, ga na、「幾」*kɯlʔ, *kəjʔ)という字は、結局、可能の「可」にも使われ、人偏が付いた「何」にも使われ、音が近いから、結構、仮借を激しくしたんですね。
これは明らかに語源がやはり違う、漢蔵祖語*m-kal ⪤ *s-galでして、(藏語སྒལ་པ, sgal pa、緬甸ခါး, hka:と同じ語源で、)そこから「荷」*ɡaːlʔ, *[ɡ]ˤajʔが来ている可能性があり、
「背中」とか、もしくは「腎臓」(のいい間違え) という、それは背中にある(臓器)から、「運ぶ」という意味まである言葉なんですよね。
だから、ここから来ていますけれども、
黄河の「河」は、全然違う語源だから、やはりこれは音だけを借りて、この部分に声符に持ってきたことが分かります。
西周中期金文では、本当に人がものを背負う形をしてますよね。
本当にこれ残っていて、これは結構省略されている!
だけれども、我々が使う「河」は、篆書、小篆だとこうですけれども、こうなって近いですから、面白いことに甲骨文のこの形と、金文のこれは一番すごいはっきりしている!
かなり省略が激しい!
甲骨文でも、もうある!
こっちは我々は使う形に近い。
何とかこの部分が残っているということでかなり省略が激しい!
形声字という字は、基本的には、この方に入った物が意符であって、
声符という原則は守られているいうことで見れてこれていまして、
そこでこの長江の江という字が、何故この音になってるのか、面白いものがあるので、ちょっと見てみたいと思うんですけども。
こちらですけれども、
先ほどの「水」や「川」から始まり、
「川」から始まり、長江とか、黄河と来ましたけれども、
これを見ますと、やはり「水」は本当に真ん中のラインがありまして、
横に点点点があり、単体では結構、やはり、こういう横になるとか、点が多いものとか、それで流れが二本あり、点がこちらに来ているとか、
もう結構バラエティーがあるんですよ!甲骨文においてはということで面白いんですよね。
後の時代になってくると、これの形かな。まあ甲骨文でも多いですけれども見て、
私はここで何をやったかと言いますと、「水」の上古漢語の音は復元がものすごく難しいんですよ!
どうしてかというと、手掛かりが少ないんですよ!
なかなか他の子と声母と上の部分、お尻の部分は韻母と言いますけども、
韻母の方は分かっても、声母の方、前の先頭の子音が分かんない!
どうしても難しい!手がかりが少ないということで、
もう学者がもう本当にこんな簡単な言葉にも関わらず、
「水」なんて、もう小学校1年生でも知っている言葉でも、復元が難しい!ということで、
どういう作戦をとるかと言いますと、
ちょっと音韻学や比較言語学に近い話になってきちゃうんですけれども、
このように私は「水」に関係する言葉、
例えば、漢蔵祖語もしくは、上古、ものすごい古い時代に中国の上古漢語を話していた。
もしくは、更に遡る漢蔵祖語を話した人たちと接触したであろう、周りの周辺の語族たちの全部「水」を持ってきたんですよ!
そうすると、このオーストロネシア語族、これはみんな台湾の方に行ったりして、
そこからもうポリネシアとか、メラネシアとか、ミクロネシアとか、東南アジアとか、マレーとか、フィリピンとか、ものすごい島の方がどんどん航海して広がっていった言語で、
まあ、最後マダガスカルまで行ってますけど!
そこまでの言葉たちの祖語を再建すると、まあ元々いた集団は、中国南部から台湾あたりだと考えられる。
それでそこの言語とそれとクラ=タイ語族、もしくはタイ=カダイ語族ですね。
このタイ=カダイ語族(壯侗語族)は中国の南部から、タイとか、ラオスとか、東南アジアの方に行ったんですよね。インドシナ半島に行きましたが、
それらは元々かなり近いんですよね!
更に上ではつながった可能性があるということでして、
あとはミャオ=ヤオ語族(苗瑶語族)と、
更に南亜語族、べト=ムオン語派の方にも行ったり、もしくはモン=クメール語派などの言葉は、もう全部で元々で全部子音が近いですよね!似てる!
漢蔵語族のものを全部私は拾ってきたんです!
「水」に関係するもの、もしくは「川」に関係するものなどなど、
それでそれを見ますと、いくつかは漢蔵祖語の段階でも、
この苗瑶語族*ʔu̯əmや更に南亜語族*lujʔ ~ luuj ~ luəj ~ ləəjの方に行って、オーストロアジア語族ですね。
そこから借りた可能性がある*lwi(y)で*luujと *rəyもありますが、
まあでも、それらと漢語と結びつくのは少ないんですよね。やはり、南の方に行った漢蔵語族の言語(クキ-チン祖語*luuy、ジンポー語lui³³、西夏語ljụ、ビルマ語စီး, ci:など)と接触したということ、
それと南亜語系*ruŋ ~ *ruuŋ ~ *ruəŋとこっちから入った。
こらもやはり「水」という意味を持っていて、
やはり、長江の「江」*kroːŋ, *kˤroŋはこの*kl(y)u(ŋ/k)から来てる可能性があるとこの語源の可能性があるかと!
そして、例えば、*r/s/g-waはどちらかというと、「水」とか、「雨」ですね。
この「雨」は、やはり漢語の「雨」*ɢʷaʔ, *C.ɢʷ(r)aʔで漢蔵祖語*r/s/g-waですから、
こういった音だから、「雨」はここから来た可能性がある!
実際これ漢蔵祖語でも、「雨」の方でありまして、
「水」でも大体この辺は流れる系なんですよね。
「川」とか、「谷」でして、こちらは「流れる」で、これは「水」という意味を持ってる!
これは全然、語族は違う方から、かなり南の方に行った言語が借りた可能性があり、
これらは、大体、漢蔵祖語で元々固有としてあった言葉なんですね。
だから、これを見ると、なるほど、大体三本(*r/s/g-wa、*m-t(w)əy-n ⪤ *m-ti-s、*tsyu)ある。
私はモグラたたきみたいに全部調べたんですよ!
もうローラー作戦で調べ上げてきた。
それで大体、今見てるんです!
もう先ずはこういう語源を探索したいという時には、
もう一つのことで集中するのではなく、全部を集めてくるんです。
「水」に関係することを見ますとね。
ここで入ってくるのは、おもしろい!
*t(w)əyの部分ですね。「川」*kʰjon, *t.l̥u[n]の語源は、この可能性がある!
*t(w)əy-nでここに更に*-nの接尾辞(suffix)が付いた形ですよね!
ちなみにBaxter-Sagartは*t.l̥u[n]で考えましたけれども、鄭張尚芳は*kʰjonですから、どっちかというと、こちらの語源*kl(y)u(ŋ/k)の方で考えてた可能性が高い!
ということは一つ言えるのは、
この「川」*kʰjon, *t.l̥u[n]という言葉を復元するのも、非常に難しく、
中古漢語t͡ɕʰiuᴇnから遡る方からも推定できますが、
かなりこの上古漢語の再構には、語源はこうだったという意思が入り込むということで、
再構した人の語源が、何だったのかという気持ちが入りこむから、
逆に言えば最高の度合いというか、
再構の強さは低いんですね!再構もやはり難しい!
鄭張尚芳とBaxter-Sagartで違うから、それでしかもこちらで考えただろう、
最近やはり、Baxter-Sagartは、やはり、コレということで、こっちになっちゃってるということで、
鄭張尚芳からすれば、こっちに入れるべきということでありますけれども、
「川」*kʰjon, *t.l̥u[n]は見えてきた!
最後にこの「水」これは大変なんですよ!
ものすごく!それで「水」を見ますと漢蔵祖語*tsyu!
これじゃないかなと、私は思ったんですよね。
この「水」という言葉の今、申し上げたみたいに語源が何かと、ものすごい色んな説があるんですよ!
こちらの説もあります!*t(w)əy-nの説もあります。
今度は下から攻めていくんですよね!
上からガーと行ったのは、結局これはチベット語ཆུ, chuとか、ナガ祖語*a-tʃəとか、タマング祖語*ᴮkjuiとか、羌語tsùとか、ナシ語dʑi³¹とか、
これらの言葉を全部集めてゆき、
多分元々がこういう形だったと行きました。
それともう一つは、下の方の現代漢語の方で特に閩南語が面白くて、
閩語はかなり古い段階で上古漢語から分かれたじゃないかと、
後の方言は現代漢語の方言は、中古漢語から分かれた可能性が高い!
かなり古い形を保っている粤語や客家語ですら、やはり中古漢語からではないかと、
それで更にこの閩南語を更に遡っていきましたら、
大体これは2000年くらいまでいく閩祖語(Proto-Min)がありますけれども、
アメリカ人のジェリー・ノーマン(Jerry Lee Norman)が、
この閩語の沢山の方言を集めて比較再構して、
これかと2000年前の閩祖語は、こうと来ているので、
結構これは直で今ある音のデータから行くため、信頼性は高いんですよ!
言ってみれば、同じようにこのアスタリスク(*)が付いているものは、みんな再構された音ですから、
実際に今、文献か、もしくはしゃべっている言葉として確認できる言葉ではなくて、
論理的に再構された言葉だから、アスタリスク(*)をつけるんですよね。
ここにこの漢蔵祖語にもついてますね。
中古漢語に付いていないのは、半切で《切韻》とか、《廣韻》ではっきり書いてある半切から直接行きまして、
中古漢語ɕˠiuɪXという音だと分かりまして、かなり擦れた音ですが、我々の日本語の「水」(スイ [sɨᵝi])も中古漢語から来ていますね。
だから、大体、漢蔵祖語*tsyuと、閩祖語*tšyi Bと、中古漢語ɕˠiuɪXの三個が出そろったですけれども、
三点セットから攻めていくわけですよ。
そうすると、上古漢語はこれ全然みんな違うんですよ!
さっきの「川」もそうでしたけど、
もう学者によって、これ李方桂*hrjidx、鄭張尚芳*qʰʷljilʔ、バクスタ=サガール*s.turʔ、
全然違う!これだけで学者がもう皆、もう「水」の音が分からないんです!
やはり難しい!私はこれは思ったんですよ!
こんな簡単な言葉は、意外と復元が難しいものが多いんですよ!
田んぼの「田」*l'iːŋ, *lˤiŋ(漢蔵祖語*b-liŋ、中古漢語den)とか、 先ほどの「天」とか、
それはどうしてかと言ったら、やはり、こうした基礎的な言葉は、
「水」とか意外と論理的に言語学の理詰めでこういう形じゃないかとは、
他の言葉との関係性で推論をして復原していくけれども、
それでは引っかかんない!
つまり、どういうことかといったら、簡単な言葉であればあるほど、
意外と昔からあんまり変わらずに受け継がれて来た可能性あるんじゃないかということですよね。
もう一つ考えられるのがそれが印欧言語でも、そうなんですよ。
本当に「父」*ph₂tḗrとか、「母」*méh₂tēr とか、「水」*wódr̥とか、「火」*h₁n̥gʷnís, péh₂wr̥(二通りの語源があり、サンスクリットअग्नि, agní、ラテン語ignis、スラヴ語ⱁⰳⱀⱐ, ognĭ、もう一つは、トカラ語B puwar、ギリシア語πῦρ, pûr、英語fireでは系統が異なります。ヒッタイト語では両方𒀀𒀝𒉌𒅖, aknišと𒉺𒄴𒄯, pa-aḫ-ḫurが見られます。)など、そういう言葉は意外と古い段階から意外と変化しないんですよ!
もう、サンスクリットでも、アヴェスタ語でも、イラン語派ですけど、
ヒッタイト語でも、トカラ語でも、
ヘレニック語派のギリシア語でも、イタリック語派のラテン語でも、
大体、一緒ですよ!ゲルマン語派でも、ケルト語派でも、
アルメニア語派でも、アルバニア語派もありますけれども、
大体そんなに変化してなくて、(きれいに子音対応して)みんな似てるんですよ!
簡単な言葉であればあるほど似ています!
だから、意外とこうした言葉を再構していく中で面白い気づきは、
人間の言葉の中で簡単な言葉であればあるほど変わりにくい!
ずっと使われ続けて変わるといっても、
漢蔵祖語はこれ6000年前ですから、6000年ですから!
意外と6000年は大した時間ではないですよ!
さっきみたいな感じですよ!
本当にそういう時間感覚になってきちゃいますよね。
ですけど、そういった形で見ますと、
この tsyまで一致してるんですよね。
これは本当にやはりそうだろうと!
しかも、中古漢語もɕˠiでしょ([ɕ]は無声歯茎硬口蓋摩擦音voiceless alveolo-palatal sibilant fricative)!
ここですごい面白いことがありまして、
この ts の場合、この ts ですね!
これは ここのところの軟口蓋化[ˠ](咽頭化 [ˤ]と言い間違えました)と(š)、ここのところの二個に一致(ɕˠ→tš)するんじゃないかと!
t とsがちょうどここと一致して、次の y がこのiに一致するじゃないかと、ui の所は微妙ですよね。
この漢蔵祖語がu、閩祖語がiでしょ。
漢蔵祖語は大体6000年前、閩祖語は2000年位前、上古漢語はちょっと遡った3000年位前、この中古漢語がもうちょっと下がって1500年位前ですから、
これの三点セットでいけば、上古漢語は大体*tsy で最後はuかiのどちらかだと、
*tsy のuかi、*tsyui あたりがここに当てはまる可能性があるじゃないかと!
こういった他の言葉との韻の踏み方や通仮の関係などで理論的にいくと*s.turʔでかなりこのバクスタ=サガールは、近いと言えば、近いですよね。
(《釋名》とBaxter-Sagart 2014: 268によれば、)この*-r はこれは(上古漢語の)ある(地方の)方言では、*-r は*-jとなり、こちらに近い音になることもありますから、
最後のこの*-ʔは、中古漢語にあるX!
このXとは声調でこれは上声ですから、
この上声は全部、上古漢語の*-ʔにいくんですね。
まあ、閩祖語のBもそうです!
だから、ここが付いているとは理解できる!
そうすると*tsyuiʔあたりですから、*tsyuiʔ(発音)辺りで再構するのが、この三点セットから行けば、一番妥当かと、私は思ったわけでして、
だから私が今言っているのは、このBaxter-Sagart、鄭張尚芳、李方桂さんが取った他の漢字との関係において、
上古韻部とか、この場合はちょっと今は頭の部分だから、(「水」の場合は)書母、声母と言いますけれども、
頭の部分のこの子音に関しては、なかなか難しいんですよ!本当にそういうことはあるんですけれども、
これは推定の方法では、やはり推定が非常に難しい分野があって、
特に簡単な言葉は、やはり、ずっと引き継がれているから、
こういった漢蔵祖語、閩祖語、中古漢語との挟み撃ちから(上古漢語を再構して)ゆくほうがよさそうということで、一つ私は言いたいこと、
これらの復元の方法では手に負えない、かなり苦手な分野は、
こうした漢蔵祖語や外部の外的な(方法で行くのがよく、)
今までのやり方は内的なんですよ。
結局だって彼らはこの漢語の中で内的に再構してるんですよね!
まあ、ある程度、時どきは外を見に行くんだけども、
やはりつまみ食いみたいにして、時どきちょこちょこと持ってきたりするんですよ!
だから、もう調べるなら、徹底的にバーンと語源を持ってきて、
もう徹底的にそこにしつこく見て行く必要があるじゃないかと!
そうすれば結構やはり元々あった言葉の中にどこかしらから、言葉が引き継がれてきているわけだから、
何かしらに当たるんじゃないかと当ててきているわけですね。
そういった方法は新しい!
今は取ってきたようなことをまとめますと、
どういうことが言いたかったかと言うと、
先ず語源を知りたい時には、全て「水」だったら、「水」に関係する言葉を、
先ずは漢蔵語族や漢蔵祖語から持ってくるわけですよ!全部かき集める!
それで更に周りの周辺の語族の言葉もバーと持ってくるんですね。
特に漢蔵祖語で言えば、オーストロネシア語族、南島語族、
それとタイ=カダイ語族(クラ=タイ語族、壯侗語族)、
それとミャオ=ヤオ語族(苗瑶語族)、
それと南亜語族(べト=ムオン語派、モン=クメール語派)。
大体この四語族は周りにいたということで、
それらを全部持ってきて、
その上で一つ一つ消去法的に行き、
できれば、やはり、漢蔵語族の中で見つけ出そうがいいわけですよ!
少なくとも簡単な言葉であって、ずっと日常的に使う言葉は、
例外的にそれが外来語に入れ替わっちゃうことあるけれども、
基本的には、その漢蔵語族の中で拾うことが、一番近いんじゃないかという!
地理的にもそうですし、やはり少し地理的に離れますから周辺の語族は、
ということでそういった形で一つ一つ、まあ、一番最終的な決め手となるのは、
意味と音素でして、他のデータをバンバンで持ってくるのは、祖語だけを持ってくればいいじゃないかって言うけれども、
やはり、他の言葉の中でも微妙に意味が変化していって、
もしく微妙に音も変化して、それらの音のちょっと微妙な変化し方も含めて、全体的に見ていくんですよね。
それでその中で消去法的に行けば、これじゃないかという、幾つかの候補が絞れてきて、
最終的にはもうここまで子音が一致してるだろうと、
そうすれば、ここだろうと一番可能性が高いものを見つけ出すということで、
この方法が一番確実じゃないかと、
もう、できる限りに考え尽くした上で考えていこうと、
一つ何かちょっと似ているから持ってきたじゃない!
もう洗いざらいローラー作戦で考えてみましたということで、
ちょっと話が逸れすぎましたけれども、
面白い話でした!
そして、最終的に上古漢語の音はこうだったんじゃないかという結論まで行けたので面白かったと思って、戻ってみたいと思います。
そういった形で先ほど象形にも「川」があって、
更に「水」もあって、
それで全部、字形的な変化も見れて面白かったし、
それとあと「水」という言葉の本当に難しい復元が、上古漢語も含めて、
ちょっと言語学の方に寄り道しちゃったという感じではありましたけれども、
形声文字に戻ってみたいと思いますよ!
この「江」「河」と同じく、甲骨金文で私はいろいろとどういう例を持ってこようかなと考えたんですけど、
やはり、まあ「水」できたら、今度は「木」だということで、
「柳」と「桐」を持ってきたんですよ!
この理由は、甲骨文からあるものの方がいいかなと思いまして、
殷の後に周の後に戦国になってくると、ものすごい数の形声字が出てくるんですよ!
だから、形声字の例には事欠かないんですよね。
ものすごい数があるんですよ!我々の使ってる漢字の八割ぐらい形声字ですよね!
そういった形でどれを持ってこようかなと思ったとき、
やっぱりできる限り、古い方に遡る方がいいかなと思って、 この「柳」と「桐」を持ってきたんですね。
それでそれを見ていこうと思うんですけども。
今度は面白い、我々は偏は大体、左に持っていくんですよね。
だけれども、先ほどありましたけれども、右に持ってきちゃってもいい。それで左に持ってきた見たり、上に持ってきたってもいいとか、
ちょっと先ほどとチラッと言いましたが、
これもちょっとなってるかもしれませんけれども、 下にきている場合があって、水の場合はやはり、水は下を流れるからということもあるかもしれないけども、
この水が下に来ちゃう場合もある。
だから、別にどこにあってもいいんですよね。その声符と意符の位置関係はということで上にきている「木」があり、その下にこの「卯」という部分があるんですよね。
「柳」の木の下のこの部分は「卯」*mruːʔ, *mˤruʔ > 中古漢語mˠauXですよね。
それでこの「柳」自体の音は「柳」*m·ruʔ, *([m]ə.)ruʔ > 中古漢語lɨuX > liǔ(西夏語liẹj、ツジア語 liu̵³³ kho³⁵、フォワ語 liɯ²¹ sɯ¹³、ナシ語 mɯ⁵⁵ lɯ³³と関係?)でちょっと mとuの間に母音əが入ってるんですよね!
微妙に違うけれども、でも、その音を借りてきているわけですよね。
それで「木」を付けている!
今、見てきたようにこれは川の名前でもそうでしたけども、 木の名前もそうですけど、
また全然、語源が違うけれども、音だけを借りてきて、声符が付いているんですね。
こういった話は同じく「桐」もそうなんですよ!やっぱりこの「桐」*doːŋ, *[lˤoŋ] > 中古漢語duŋ(土家tong³、彝語thu³³と関係?)ですけど、
やはり、上古漢語だと d とか t はlになっていて、「同」*doːŋ, *lˤoŋと全く同じ音ですね!
だから、この「同」の部分を(声符として)付けまして、
最初の頃は、「𠔼/凡」*bom, *[b]romと字形が殆ど一緒で近いんです!
この形がまあちょっと伸びているけれども、
それと区別するためか、先ほど飾符と申し上げましたけど、
飾りの「口」が加えられること多いんですけど、
こういった形とか文字を区別をしようとしたとき、
近い文字とを区別したい時に、この飾符「口」をつけた可能性がある!
これは「𠔼/凡」*bom, *[b]romという字と非常に似ていたから、
「同」*doːŋ, *lˤoŋと区別して付けられた可能性はあるんですけども、
どちらにしても、「桐」も同じく音を借りてきちゃって、
こうして声符と意符と合わせて成り立ってることですね。
これは意符が声符に貫いているということで面白いですね。
そういった形で形声文字を本当に一般的には、みんなこういった楷書で見てきますよね。
だけれども、やはりKF-Ars Sinicaでは、できる限り古い形で見たいということで、
甲骨文まで残っている漢字の形声字を一所懸命に探して、どの文字にしようかなと、
こうした形を見ていまいましたけれども、
本当にこの形声字はものすごい数あるということで色んな例がありますので、
今後とも登場してまいりますと思います。
(全体が長くなってしまいましたので、半分に分割いたしました。来週に後半をお楽しみ下さい。いつもご覧下さりまして、ありがとうございます。失礼いたします。)