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大バッハとヴァイスの組曲とパルティータ

Matthäus Merian der Ältere (1650) Topographia superioris Saxoniae, Thüringiae, Misniae, Lusatiae. Cöthen (heute: Köthen).

前回はフランス王国のリューティスト(メッサンジョー、老ゴーティエ、フランソワ・デュフォー、ジャック・ガロ)とクラヴサニスト(シャンボニエール、ルイ・クープラン)、フローベルガーやゲオルク・ベームまででしたが、今回も原典となる楽譜資料に基づき、後期バロックの音楽の構造と技法、リュートとチェンバロの演奏や解釈を明らかにしてまいります。

1717年からヴァイスと大バッハはドレスデンのザクセン選帝侯宮廷と関わり、1739年夏にヴァイスはライプツィヒの大バッハを訪れ、音楽の夕べを楽しみ、また、ヴァイスのソナタ イ長調(WeissSW 47)に大バッハの編曲(BWV 1025)が生まれました。

ケーテン時代のフランス組曲やライプツィヒ時代のパルティータに作品の様式や書法の変化を探り、鍵盤楽器とリュートの巨匠、大バッハとヴァイスの試行錯誤の跡を明らかにします。

大バッハやヴァイスの洗練された流暢な音楽が、いかなる経緯で継承され、巨匠の音楽が先人の工夫に基づき成立した過程を信頼できる資料により、楽しむことができます貴重な機会です。

会場の定員が大幅に増えました。お友達を沢山お誘いの上、遅くお見えになられても、早くお帰りになられても、お気軽にいらして下さい。皆さまとお会いする日を楽しみにしております。

2021年7月4日(動画追補)

大バッハとヴァイスの組曲・パルティータにより、今までの音楽の歴史を顧みながら、徹底して作品の構造を探りゆきます。

シルヴィウス・レオポルト・ヴァイス(1725年):〈組曲 第6番 変ホ長調〉
Silvius Leopold Weiß [1687-1750] Suite Nr. 6 für Laute in Es-Dur WeissSW 10 Prélude – Allemande – Courante – Bourrée – Menuet – Ciaccoñe (GB-Lbl Add. Ms. 30387, 40v-46r)

生誕230周年です。ローマやドレスデンに滞在して、ヴェネツィアのカプスベルガーやフランスのゴーティエらの影響を受けました。

②ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1722年):〈フランス組曲 第4番 変ホ長調〉
Johann Sebastian Bach [1685-1750] Französische Suite Nr. 4 in Es-Dur BWV 815a Præludium – Allemande – Courante – Sarabande – Gavotte I & II – Menuet – Air – Gigue

フランス組曲には異稿が多く、自筆譜(D-B Mus. ms. Bach P 418)にないアルペジオの前奏曲PræludiumやガヴォットのトリオGavotte IIはミチェルの筆写譜(Bach P 289, Faszikel 13)・ギャラントリーのMenuetはヴォグラーの筆写譜(Bach P 420)で補いました。

Præludium – Allemande – Courante – SarabandeGavotte I – Gavotte II – Menuet – Air – Gigue
スヴィアトスラフ・リヒテル

シルヴィウス・レオポルト・ヴァイス(1725年):〈組曲 第18番 ハ長調〉
Silvius Leopold Weiß [1687-1750] Suite Nr. 18 für Laute in Es-Dur WeissSW 24 Overture – Bourrée – Aria – Menuet & Trio – Gigue (GB-Lbl Add. Ms. 30387, 117v-121r)

フランス様式の序曲で始まり、ギャラントリーのメヌエットはトリオ付きです。後期に舞曲の様式や組曲の配列が自由になりました。

④ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1728年):〈パルティータ 第4番 ニ長調〉
Johann Sebastian Bach [1685-1750] Partita Nr. 4 in D-Dur BWV 828 Ouvertüre – Allemande – Courante – Aria – Sarabande – Menuet – Gigue

《クラヴィーア練習曲集 第1部(Erster Teil der Clavier-Ubung)》で出版されました。フランス様式の序曲が付点リズムやティラータやシュライファー音型による荘重なalla breveと急速なフーガの9/8が交替します。アルマンドはアリオーソ、サラバンドはソナタ形式に近いです。

Ouvertüre – AllemandeCourante – Aria – Sarabande – Menuet – Gigue
グレン・グールド

2017年4月25日

「大バッハとヴァイスの組曲とパルティータ」にいらして下さりました方、また、ご参加がかなわない方もご声援を下さり、ありがとうございました。

今回も林さんや津谷さんのおもてなしで会を和やかにして下さり、中村さんが音響やコンピューターを調えて下さり、円滑に進められました。

会場費や御茶菓子代などの必要経費に加え、ノートパソコンとプロジェクターを購入する積立の温かいご支援を下さり、感謝しております。

今回は先ず何かを知ろうとするとき、発想の起源から変遷を追跡すること、楽譜と音楽、視覚と聴覚を対応して捉えることをお話しました。

メッサンジョー、老ゴーティエ、フランソワ・デュフォー、ジャック・ガロの前奏曲をおさらいして、ヴァイスの〈組曲 第14番 ヘ長調〉(1719年・WeissSW 19)を聴き、前奏曲や舞曲の様式、ヴァイスが好んだ和声や細かな工夫を感じました。

バロック音楽の通奏低音のシステムをお話して、カッチーニのモノディ様式の声楽、コレルリのヴァイオリン・ソナタ、テレマンのフルート・ソナタ、ドメニコ・スカルラッティのトリオ・ソナタなどを概観して、ヴァイスの組曲でも低弦に見られました。

デュファイやオケゲムはソプラノ(superinus)と定旋律(cantus firmus)を置くテノール(tenor)の上に高声部(contratenor altus)と下に低声部(contratenor bassus)を平行和声(fauxbourdon)を含め、四声にしました。

ジョスカンやド=ラリューらは、カノンやフーガを発展させ通模倣様式で声部が対等にして、晩期ルネサンスにモラーレスやパレストリーナらは横の旋律と縦の和声を制御して、ラッソやマレンツィオらは半音進行や転調を開発しました。

また、多声音楽にオルガン・金管楽器・リュート・ヴィオールの伴奏が書かれ、北イタリアのカッチーニやモンテヴェルディらが、旋律に対する和声付き通奏低音に多声音楽を再構築して、叙情性を高めたモノディ様式を確立しました。

中世末期にダンスタブルが、不完全協和音程の三度と完全協和音程の五度を三和音の転回形に融合して、ルネサンス末期に七や九の和音が導入され、多声音楽で蓄積した和声が、バロック様式の通奏低音に応用されました。

通奏低音で横に流れてゆく音の連なりに対して、縦に積み上げられた音程が三和音([135])を基礎として、六の和音([13]6)や四六の和音([1]46)や七の和音([135]7)なども導入され数字付き低音のシステムになりました。

声楽で開発されたモノディ様式が器楽に応用され、縦に積み上がる音程が構成する和音が分散して、横に引き延され、時間で移ろいゆき、非和声音が用いられ、経過和声が豊かになり、リズム型のパターンが生まれてゆきました。

リュートや鍵盤楽器では一台で演奏でき、二本の旋律に通奏低音が付くか、通奏低音を二本に分け、トリオソナタにもなりました。また、ヴェネツィア楽派が用いた分割合唱様式から、ルネサンス後期にガブリエリやシュッツらが、片方の合唱を器楽の集団(オーケストラ)にしてコンチェルタート様式が生み、バロック初期にコレルリやトレルリらが器楽の集団と独奏の楽器になるコンチェルトにして、ロッティらが五度圏による転調システムを確立しました。

通奏低音が速く流れ、転調がめまぐるしく、快速な曲が多くなり、舞曲などにも適用され、音型が豊かになりました。ヴェルクマイスターの改良中全音律により、特に長三度や短三度が色んな調で美しく響くよう鍵盤楽器が調律でき、北ドイツのブクステフーデらは同じ音型を違う調性で連ねて長大になりました。また、通奏低音と和声を暗示する音で無伴奏楽曲が生まれ、逆に主旋律と通奏低音の間にオブリガート声部を入れ和声を充填して伸縮自在でした。

用され、音型が豊かになりました。ヴェルクマイスターの改良中全音律により、特に長三度や短三度が色んな調で美しく響くよう鍵盤楽器が調律でき、北ドイツのブクステフーデらは同じ音型を違う調性で連ねて長大になりました。また、通奏低音と和声を暗示する音で無伴奏楽曲が生まれ、逆に主旋律と通奏低音の間にオブリガート声部を入れ和声を充填して伸縮自在でした。

後半は、《ブックスハイム曲集》第216番の〈前奏曲 ハ長調〉(1473年)、カベソンの〈ティエント 第五旋法〉(1578年出版)、バードの〈前奏曲〉(1612年・《パーセニア》第1番)、フレスコバルディの〈第2 トッカータ〉(1627年・《トッカータ集》第2巻)、ブクステフーデの〈前奏曲 ホ短調〉(1685年頃・BuxWV 142)、カプスベルガーの〈分散和音のトッカータ〉(1604年・《キタローネ曲集》第1巻)へと進んで聴きました。

大バッハの〈フランス組曲 第4番 変ホ長調〉(1722年・BWV 815a)に到り、自筆譜にない分散和音の前奏曲はミチェルの筆写譜・ギャラントリーのメヌエットはヴォグラーの筆写譜で補いました。和音の進行や転調の展開、リュート音楽の名残として低音の動き、ブリゼ奏法やイネガル奏法をお話しました。

昔の大家たちは実作から学び、作曲をしましたからこそ、先人から継承された様式や発想の系譜を追跡することが理解の近道になりますことをお話しました。大バッハは音楽の要素を端的に作品で表現してモデルに還元して提示しました。

大バッハは旧作を改訂して異稿を多く残しました。細かな旋律や音型の区切りの違い、経過和声やリズム型が異なり、縦の音程の積み上げと横の和声の動きの組み合わせを多様にして、単調を破る工夫を続けたことが分かります。

大バッハの作曲法を資料や証言から構成でき、フリーデマン(1720年)やマグダレーナのための楽譜帳(1722/25年)は、音階と和音から旋律やリズム型を紡ぎ、通奏低音を展開して和声の流れを生み、《平均律クラヴィーア曲集 第1巻》(BWV 846-869)の題詞(1722年)で全音・半音、長・短三度を網羅すること、《インヴェンションとシンフォニア》(BWV 772-801)の序文(1723年)に二声とオブリガード声部を歌うことが主張され、晩年にパレストリーナのミサ曲やフックスの《パルナス山への階段》(1725年)で厳格対位法を研究して、《14のカノン》(1748年・BWV 1087)や《フーガの技法》(1749年・BWV 1080)で音符の配置や旋律の操作を抽象化しました。アグリコラによる証言(1774年・《一般ドイツ文庫》第22巻243頁)では、通奏低音を重視して透明な和声進行を配慮して四声コラールを作曲したことが分かり、声楽(合唱音楽)や器楽(鍵盤音楽)でもそのまま適用されました。

大バッハやヴァイスは、バロック音楽の発想が蓄積した時期を生き、和声や音型のあらゆるパターンを試み、最高に緻密に構成でき、バロック音楽の発想の中で行きつく所まで進みまして、古典派の新様式に移行したと考えられます。

音楽は楽譜でしか伝わりませんが、楽譜の視覚と楽音の聴覚を連携させ、楽譜に親しみのない方もお楽しみ下されますようにコメントを心がけまして、作曲家や演奏家の考えをなるべく平易な言葉でお届けできますように努めました。

皆さまがお喜び下さり嬉しいです。今後とも音楽を愛し、楽譜資料を集め、音楽の系譜を見つけて、歴史を組み立て、手を変え品を変え、作者の思考過程を作品から明らかにして、音楽の面白さや奥深さを熱く語れましたら幸いです。

前奏曲の歴史をリクエストを頂きました。リュートやクラヴサンのラメントやトンボー、デュファイとオケゲムのミサ曲、ドメニコ・スカルラッティ、19-20世紀のピアニストとヴァイオリストの系譜、ショパンの流派なども計画しております。

皆さまと音楽を通じて交流ができ感謝しております。サロンは隔月で開催してまいります。続編のヴァイスのリュート曲と大バッハの鍵盤楽曲を核にフランス風序曲の歴史を予定しております。お会いする日まで、お元気にご活躍ください。

シルヴィウス・レオポルト・ヴァイスの〈組曲 第14番 ヘ長調〉(1719年・WeissSW 19)
Prélude – Allemande – Courante – Bourrée – Sarabande – Menuet – Gigue (GB-Lbl Add. Ms. 30387, 91r-96r)

2017年4月27日

皆さま、いつもありがとうございます。次回の予告です!!第4回は6月8日(木)午後7時にアカデミー向丘 学習室で集まりましょう!!

第3回の後半に予定していたフランス式序曲からリュートや鍵盤楽器への系譜を追跡して完結したいと思います。宜しければいらして下さい。

プログラムの概略はできましたが、時間をかけて練り上げ、手稿譜や印刷譜を取り寄せ、来月の中旬に特設イベントページで発表いたします。

私は昔から何でも教科書で天下り式に教えられては物足りないため、自分で資料を集める中で色んなことを発見することを楽しんできました。

大きな事実を列挙した教科書で見落とされがちな細かやさを通して、実際に起きたことを知る事こそ、物事の本質を知る事と考えております。

それが探求や研究の意義と感じており、大バッハやヴァイスも同じ考えで先人の実作から音楽を学び、自分の作曲に活かしてきたと思います。

また、皆さまとお会いできますことを楽しみにしております。お元気にお過ごし下さい。ありがとうございました。

クリストフ・グラウプナーの〈序曲(Ouverture [in G-Dur] a 2 Corni di Selva, Tympani, 2 Violini, Viola e Cembalo)〉(1732-34年・GWV 466)
Ouverture – Air en Rondeau – Air – Menuet I & II – Réjouissance – Uccellino chiuso – Air alla polonese – Menuetto

Darmstadt, Universitäts- und Landesbibliothek (D-Ds) Mus.ms. 464/64

2017年4月15日

皆さま、温かいご声援やご理解を下さりありがとうございます。また、お誕生日のお祝いを下さり、音楽を通じて心温まる交流を改めて実感して素敵な一日を過ごしております。

次回の資料を何度も検討しておりましたら、今までの伝統の連なりの概観することから趣向を変え、ある作品を掘り下げてゆきましたら、余りにも内容が盛り沢山になりました。

そこで大バッハの〈フランス組曲〉2つ、ヴァイスの〈組曲〉1つに絞り、楽譜をプロジェクターで写しながら、内部構造まで徹底して高密度にお伝えできたら有意義と考えました。

作品の鑑賞や批評を越えて、本物の傑作を味わいながら、バロック音楽とは何か、どこになにが隠されているか、今まで通り様式や伝統や技法の継承を共有できれば最上です。

音楽を通して作者の考えや思いを明らかにすることを重ねましたら、感受できる引き出しが増え、音楽からより多くを得られ、音楽の楽しみが深まりますことを期待できます。

定員に余裕ある会場ですから、ご忌憚なくお友達をお誘い下さい。音楽を心から愛する仲間が少しずつ増えましたら嬉しいです。皆さまとお会いする日を楽しみにしております。

〈フランス組曲 第2番 ハ短調〉(1722年・BWV 813)

2017年4月22日

皆さま、こんばんは。ありがとうございます。明後日は東京メトロの東大前駅2番出口の隣で一階の学習室に集まります。

大バッハの〈フランス組曲〉とヴァイスの〈リュート組曲〉に絞り、ピアノを弾き、楽曲の構造をお話できる余裕が生まれました。

初めてお聴きになる方も楽しく、今まで聴いていらした方も違う観点から聴けて、意義を感じて下さることを期待します。

また、皆さまと楽しい時間を持てますことを楽しみにしております。ご友人をご遠慮なくお誘いの上いらしてください。

ジルヴィウス・レオポルド・ヴァイスの〈リュート組曲 変ロ長調〉(1725年・《ロンドン手稿》第6番・WeissSW 10)

2017年4月23日

こんばんは。明日にお会いできますこと、楽しみにしております。皆さまと和やかなお時間を過ごせましたら嬉しいです。温かな御茶と御菓子でおもてなし致しますが、美味しい御菓子がございましたら、お持ち寄り下さりましたら助かります。

〈平均律クラヴィーア曲集 第2巻》第3番〈前奏曲 嬰ハ長調〉の初稿〈前奏曲 ハ長調〉(1738年・BWV 872a)や〈フランス組曲第4番 変ロ長調〉(1722年・BWV 815a)の前奏曲の分散和音と対位旋律から、大バッハの通奏低音と和声進行を感じてまいりましょう!

《ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハの音楽帳》第2番(1720年・BWV 924)や《平均律クラヴィーア曲集 第1巻》第1番(1722年・BWV 846)の前奏曲 ハ長調とも、和音と旋律の構成で関係して、大バッハの作曲基礎として音楽の源泉でした。

D-B Mus. ms. Bach P 226, Faszikel 3-7
D-B Mus. ms. Bach P 209, Faszikel 18

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