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中古漢語の韻書や韻図、《切韻》《廣韻》、《韻鏡》《指掌図》を語りました。漢字的獨特性系列 Unique Chinese Characters

漢字のユニークさを探究!新たなシリーズ始まりました!漢字の構造を字形、字義、字音から、漢語の系譜を起源からたどります!字幕もぜひご覧くださいませ!暖かいお言葉かけを下さりましたら、SNSでシェアー下さりましたら、今後の制作の励みになります。KF-Ars Sinica、KF-Scholaと併せて、何卒よろしくお願い申し上げます。

2021年11月12日

皆さま、こんにちは!

KF-Ars Sinica(系譜でたどる中華文化)の漢字のユニークさを探求するシリーズも、

音韻ということで漢語のユニークさを探求になってまいりましたけれども。

前回はものすごく長くなってしまいまして、

流石にもう、4時間近い動画になりましたから、

声母と韻母でちょうど半分にカットしまして、

動画が真っ二つになりました(笑)

そして、気づいたことがございましてね。

一本の動画を半分に真っ二つにして、

声母の動画というのは、反切上字、

それで韻母の動画は反切下字ではないかと!

まあ、これはジョークですけれども。

反切のシステムというのをやりましたけれども、

そのイメージをお伝えするためにということがありますけれども。

そこでは、漢蔵祖語、上古漢語、中古漢語の子孫の一つである、

北方官話、特に普通話と標準化された、一般に中国語と言われる言語で使われる全ての音を知りたい!

また、他の方言、呉語、閩南語、客家語、粤語などとの繋がりを知りたいということで、

ものすごく詳しく見てまいりましたけれども。

漢語にはどういう子音と母音があるのかということですね。

音韻の全体を実際に今、その漢語を話して、生活している人がものすごい数いるんだと感じながら、味わってまいりたんじゃないかなと!

私は人間のぬくもりを大切にしておりまして、

ヒューマンな探究を続けておりますけれども。

これはもうチャレンジですよ!

これはもう本当に言語の音に迫るとき、

ものすごい強力な武器がありまして、

音声学、IPAと連呼しておりましたけれども。

人が出すことができるありとあらゆる音を把握しておきますことは、

ある言語で使わない音があったしても、

やはり、パレットの絵の具のように色とりどり、

選り取り見取りの方が、楽しくなってくるわけですよ!

そして、今回から、実際に現代漢語から、中古漢語、上古漢語、漢蔵祖語とどんどん遡っていくためには、

どういう発想があるのか、という世界に入ってきましたけれども。

それはもう昔の人がおしゃべりしてるのを聞くことは、誰もできないわけですから。

当時にこのように発音されたということを推定していくためには、

今、実際に喋られて生きているあらゆる子孫の言語の音を突き合わせるんですね。

まあ、一言でいえば、比較言語学、歴史言語学における比較再構ということですけれども。

それぞれ同じ先祖の言語から分かれた子孫たちは、

それぞれ異なるポイントが変わってくるんですよ!

ある所は、そのままで、別の所は変わるということが起きるわけですから、

それらを入念に見ていきまして、

慎重に選び取ると、どこが古い形なのかが分かってきまして、

段々とその言語の古い姿が分かってくるんですよね。

それが面白いんですよね!

脳の喜びにつながりまして、

これはやはり、パズルみたいじゃないかと思うわけですね。

それで多くの分岐をした系統の異なる子孫たちを集めてみてゆく方が正確に推定できて再構できる!

もっと確実になる!面白いということでして、

それなら、それぞれの変わり方のメカニズムとシステムを検討していけば、

当時の変わる前の姿が分かるんじゃないかということで、

それは内的再構と言いますけれども。インターナルですよ!

それで漢語の内部で色んな子孫たちを突き合わせて考えてゆきますけれども。

また、別の関連から、外から(同じ語族の別の言語や)借用関係や固有名詞の音写などで確認をできますけれども。

それは外的再構と言いますけれども。エクスターナルですよ!

そして、言語の特に色んなアイディア、色んな資料を用いまして、

音韻対応を確認して、 音韻体系を解明することによって、

古い時代の言語を再構していくことができるんですけれども。

それにはもうすごい多岐にわたる観点や手法がございまして、

現在進行中で研究されておりまして、ホットな分野でありますけれども。

色んな学者たちが、どのような資料を用いて、

どのような作戦で古い言葉がどうなのかに迫ってきたのかということを見てゆきたいと思いまして、

アイディア満載なんじゃないかと興奮しておりますけれども。

期待もしておりますけれども。

KF-ScholaやKF-Ars Sinicaでは、そうした一次資料(primary source)とそれを理解してゆく、 アイディアやアスペクト、観点を大事にしておりまして、

音韻学のイントロダクションの回でも、最も古い漢字の音を表した直音や反切の方法をお話しましたけれども、

そのときは服虔さんが用いた直音と反切が出てきまして、

應劭さんという、ここに今ありますけれども、

(前は)名前を出すにとどまりましたが、

こちらを見ましたら、同じところで直音と反切を両方使っている部分がありまして、

これはおもしろい!紹介しなきゃということになりまして、持って参って出しておりますけれども。

これは良く見つけてきたでしょ!

この「砮」、(呉音)「ヌ」、もしくは(漢音)「ド」は、「鏃」という意味だと書いてありますね!そのように應劭さんが言っていると!

それに対して、直音で「砮」の字の音は「奴」*naː, *nˤa > nuoと音が同じだとはっきり書いてまして、

まあ、これは声符「奴」をちゃんと持ってますね。

「石」が意符ですから、

上古漢語*naː, *nˤa、中古漢語nuoですけれども、

直音を示しまして、そして、反切「乃互反」も書いてあるんですよ!

それでそれを私は分析するわけですよ!

もう見ての通り、この「乃」*nɯːʔ, *nˤəʔ > nʌiXの前の部分を取りなさい!

そして、「互」*ɡaːs, *m-qˤaʔ-s > ɦuoH の部分を取りなさい!

そういう理由でね前半部分と後半部分を取ってくっつけ合わせなさいと!

しました!

そうするとちゃんと復元「砮」naː, *nˤa > nuoしましたということで、

ちゃんと音を二つの方式で合わしている!

面白い!應劭さん、なかなかやるじゃないかということで見てまいりましたけれども。

まあ、北齊·顔之推さんは、有名な書家の顔真卿の先祖なんですよ!

《顔氏家訓·音辭篇》というものを書きまして、

そこでは孫炎さんという方が、反語、言葉を切って、註を加えるということを、漢の末にただ一人知っていたと書かれていますが、

だけど、今では服虔さんや應劭さんも用いていたことが知られまして、実際にこういうふうにありました!

ちなみに顔師古さんもこの顔之推さんの子孫ですから、

家学として、顔家はこういった音韻とか訓詁とか、詳しく研究していた家柄なんですけれども。

まあ、そういった形で言われてまいりましたけれども。

今度は、漢語の音節を真っ二つに切って、

前と後に字を当てる反切なんていう、どうしてこんな、まどろっこしいシステムを生み出したのかと思うわけですよね。

そこで今まで特に漢語の音節の構造を主題として見てまいりましたけれども。

音韻学ですから、漢語には上古漢語の時代から、聯綿詞(日本語で連綿語)と言いますけれども。

全く同じ音を重ねる言葉、即ち、声母も韻母も全部、同じ言葉がありまして、

重畳と書いてありますけれども。

そして、声母が同じで構成される言葉、

雙聲というものもありまして、

それとあと韻母が同じ重ねる言葉、

畳韻と言いますけれども。

これらはものすごく多いんですよね!

ここでちょっと、こんなものを見てみたいと思いますけれども。

鄧廷楨さんの《説文解字雙聲疊韻譜》ということで、今お話したことなんですよ!

実は既に《説文解字》の中には、

「雙聲」「疊韻」の形で声訓を付けている。

音で意味を示しているものがかなり多いのですよ!

それでそれをまとめてくれたんですけれども。

これを見ましたら、上古漢語「祈」C.[ɢ]ərと「求」ɡuですけれども。

本当に声母が同じですよ!

ちょっと、Baxter-Sagartさんの再構では少し奥の方の有声口蓋垂破裂音[ɢ]になっていますけれども。

声母が同じ雙聲なんですよね!

しかも、語源まで同じようでして、

漢蔵祖語「祈る」*s-g-luːmから来ているじゃないかということですけれども。

次の「天」l̥ˤi[n]と「顛」tˤi[n]ですが、

今、見た「祈」C.[ɢ]ərと「求」ɡuは、こちらでしたけども。

次は「天」l̥ˤi[n]と「顛」tˤi[n]を見ますと畳韻ですけれども、

「天」*l̥ˤi[n]は上古漢語で無声化された[l̥ˤ]でして、

それで「顛」*tˤi[n]ですよ!

これはKF-Scholaでやりましたよ!

上古漢語から中古漢語へ行くときに、

どうも無声の[l̥ˤ]、英語のclean /kliːn/ [kʰl̥iːn]などという時の音[l̥ˤ]ですね。

それがt の有気音[tʰ]になって 、[t]の有気音でして、

そして、「顛」*tˤi[n]はそのまま[t]→[t]できていますから、

両方の音が近づきまして、中古漢語では、もう有気音[tʰ]か無気音[t]かだけの違いだけなりましたが、

語源がどうもこれは違うんですよ(「天」l̥ˤi[n]はナガ祖語luːm、白語heinlと関係して、「顛」tˤi[n]は漢蔵祖語s-tyaŋから来ています)!

でも、語感はとにかく良くて、それは韻を踏むから、

韻母が同じ畳韻になっているからということでして、

ここから分かることは、既に後期上古漢語の後漢の時代ですけれども、

許慎さんの時代には、雙聲と疊韻が認識されていて、

しかも、それらは、語源が違う場合もあるけれども、

語根が同じ同源であることも多いんですよ。

それでこちらへ行ってみますけれども、

実際にはどうかということで持ってきた例は、

この《毛詩》とは、《詩経》のことですね。

最初の詩ですけれども、四部叢刊の初編に宋本がありまして、

この中では、先ほど言った重疊、それとあと雙聲、それと疊韻が三点セットで揃っているんですよね。

それでこそ詩だということで《詩経》の最初に置かれているのかもしれませんけれども。

ちょっとこっちに行ってみますか!

《詩経》が出てきたら、《楚辞》でしょうということでして、

その中から、〈九弁〉とありますけれども、

これは楚の屈原と並ぶ詩人の宋玉が作りましたけれども。

こちらも古逸叢書に元代の刊本を復刻したものがありまして、

これをもう見ると、まあ《楚辞》にはよくこの「兮」という語気を調える語気助詞みたいなものが付いていて、

その前に「摶摶(たんたん)」*doːn, *[d]ˤonとか、

「湛湛(たんたん)」*r'uːmʔ, *[drəmʔ]とか、

「習習(しゅうしゅう)」*ljub, *s-ɢʷəpとか、

「豐豐(ほうほう)」*pʰuŋ, *pʰoŋなど、重なりまして、

これは重疊ですよね。起きています!ということでして、

先ほどの画面に戻ってみますよ。

即ち、今はこういうことだったんですよ。

まず、《詩経》の方で出てきた「關關」は、重疊、

「參差」は雙聲、

「窈窕」は疊韻。

それでこちらに音素を分析して書かれていますから、

というのは、国際音標で上古漢語、鄭張尚芳さんとBaxter-Sagartさんの再構音が書かれていますから一目瞭然ですよね!

「關關」*kroːn kroːn, *kˤro[n] kˤro[n]でしょ!

もう、同じ音が2回来てるから、声母と韻母が一緒の重畳です!

そして「參差」* sʰrum sʰral, *[tsʰr][u]m tsʰrajですから、

[tsʰr]というこの声母が一緒の雙聲なわけですよ!

そして、「窈窕」*qiːwʔ l'eːwʔ, *ʔˤ[e]wʔ lˤ[e]wʔですから、

[e]wʔの部分が一緒ですよ! つまり、韻母が同じ畳韻ということでして、

面白いわけですけれども。

こう見ましたら、《詩経》と《楚辞》はすごい同じ場所に来ていて、

すごくリズムを必要とする部分で締めているんですね。

だから、韻文としてはっきりしてるということで面白い!

こうした発想はかなり、やはり詩賦と言いますけれども、

まあ、日本語でいう漢詩の中では、もういっぱい出て来て、

こちらはもう紀元前ですから、

そこから、もう千年近く降りました、唐代の有名な《寒山詩》を見ますと!

「杳杳(ようよう)」ʔeuX ʔeuX

「落落(らくらく)」lɑk̚ lɑk̚

「啾啾(しゅうしゅう)」t͡sɨu t͡sɨu

「寂寂(じゃくじゃく)」d͡zek̚ d͡zek̚

「淅淅(せきせき)」sek̚ sek̚

「紛紛(ふんふん)」pʰɨun pʰɨun

「朝朝(ちょうちょう)」ʈˠiᴇu ʈˠiᴇu

「歳歳(さいさい)」siuᴇiH siuᴇiH

ということでして、これはすごいですよ!

もう、めちゃくちゃ同じに出てくる面白い!

それでこの意味としては、

「杳杳(ようよう)」ʔeuX ʔeuX、ぼんやりとか、

「落落(らくらく)」lɑk̚ lɑk̚、わびしいとか、

「啾啾(しゅうしゅう)」t͡sɨu t͡sɨu、鳥の鳴き声ですよね。

「寂寂(じゃくじゃく)」d͡zek̚ d͡zek̚も、寂しいという意味でしょ!

「淅淅(せきせき)」sek̚ sek̚、風が吹きつける音、

そして、「紛紛(ふんふん)」pʰɨun pʰɨun、雪が振ってくるという、ふわふわした感じがする。

そして、「朝朝(ちょうちょう)」ʈˠiᴇu ʈˠiᴇuが毎朝という意味でしょ!

「歳歳(さいさい)」siuᴇiH siuᴇiHが毎年という意味でして、

非常にオノマトペと言いますよね。

これはギリシア語で擬態語ですけれども、

多くて、 感覚を語感で語呂が良く、直感的に表現してきたということで面白いです!

それでこの発想で行きましたら、

もう、最高傑作じゃないかという(笑)

もうちょっと後、宋代の李清照の《聲聲慢》、

まあ、もうタイトルからこれは、重畳ですけれども、

「聲聲慢(せいせいまん)」ɕiᴇŋ ɕiᴇŋ mˠanHと(中古漢語で)読めるわけです。

それで、これを見ると、

「尋尋(じんじん)」ziɪm ziɪm

「覓覓(べきべき)」mek̚ mek̚

「冷冷(れいれい)」leŋX leŋX

「清清(せいせい)」t͡sʰiᴇŋ t͡sʰiᴇŋ

「淒淒(せいせい)」t͡sʰei t͡sʰei

「慘慘(さんさん)」t͡sʰʌmX t͡sʰʌmX

「戚戚(せきせき)」t͡sʰek̚ t͡sʰek̚

「點點(てんてん)」temX temX

「滴滴(てきてき)」tek̚ tek̚でしょ!

これは、もう全部、重畳だけで来ちゃってるという、

まあ、これは「尋(たずね)る」、

これは「覓(もとめ)る」という意味ですよね。

しかも、すごいのが、この「冷冷(れいれい)」leŋX leŋXとか、

まあ、寒々しいという意味ですよね。その通り!

「清清(せいせい)」t͡sʰiᴇŋ t͡sʰiᴇŋは、まあ清々しい、

そして、「淒淒(せいせい)」t͡sʰei t͡sʰeiは痛々しいですが、

しかも、入声がありましたよね!

「戚戚(せきせき)」t͡sʰek̚ t͡sʰek̚とか、

「滴滴(てきてき)」tek̚ tek̚

雨が降ってきてるという、

まあ、「たらたら」とか、「ぽつぽつ」とか、

そういう意味でして、

やはり、面白い語感と情景が重なってということですけれども。

まあ、これは南方の方言(呉語、閩語、客語、粤語)だったら、

現代漢語で読んでもいいですけれども。

やはり、北方官話の普通話で読まれましたら、

もう、入声が消失しちゃってるから、

この味は出てこないんですよね。

以上から、やはり、分かることは、

漢語を話している人たちは、

語感が良い言葉遊びが好きじゃないかと!

それは冗談ですけれども、

どうも、ある言葉の音と別の言葉の音が似ているとか、

語感に敏感であることが分かるんですよね。

だからこそ、こうした詩賦、

まあ、詩は《詩経》から来ていて、

賦は《楚辞》からきていますけれども。

韻文ですけれども。

それとか熟語なども生まれてきたと!

ここで見てみてきました!

それをちょっと見てみてゆきますね!

まあ、複合詞と言いますけれども、

漢字をくっつけて作る言葉(詞)は、

どうも発音が似ているとか、

意味が似ているとか、

もしくは意味が逆かということで並べられてるわけでして、

それで主語と述語など文を成している事もあって、

実は一つの言葉、単語と文章も、強く結びついていて、分けられない部分がありまして、

よく形態統語論(morphosyntax)と言いますけれども。形態論(言葉)+統語論(文章)が混ざっていまして、

それと形態音韻論(morphonologia)と言いまして、形態論(morphologia)+音韻論(phonologia)の部分が一緒にくっつけちゃった言葉ですけれども、

形態音韻論(morphonologia)は、形態論(morphologia)+音韻論(phonologia)がハイブリッドしていまして、

言葉を分析する形態論は、統語論、言葉をつなげる。

そして、音韻論、言葉の音と深い関係にありまして、

ある子音の並び、それが語根がどう振る舞うのかを考えるためには、

音韻論(phonology)に関係しますけれども。

今やってる音韻学ですけれども。

実はなる言葉、単語ですら文であるということもありまして、

統語論(syntax)とも関係してきまして、

例えば、「地震」という言葉は、主語と述語なんですよ!

「地、震う」ですからね。

「読書」は動詞と目的語「書を読む」だからです。

それで「可愛」の「能願」は、助動詞で「愛すべし」だから、

それと「文人」は、「文の人」だから、修飾の関係にあり、

まぁ、これは文ではないですけれども。

それと並列、並べます!

「彷彿」という言葉は、同義でかつ本当に雙聲ですよ!

そして、「逍遙」も同義でかつ疊韻ですよ!

だから、声母が一緒、韻母が一緒ということで言葉が作られていまして、

そして、「天地」はこれは対義語ですよね。

「天」と「地」で逆でして、まあ、「多少」、「多い」「少ない」もそうですけれども、

そうして言葉は作られています!

そして、面白いことに、どうも、動植物とかの名前は、二文字で一文字になるように書かれていることも多いんじゃないかと、

こちらにありますけれども、

「蟋蟀(キリギリス)」*srid srud, *srit srutで雙聲でして、

それで「蛺蝶(タテハチョウ)」*keːb l'eːb, *kˤep lˤepは、畳韻でこれを見れば分かるわけですよ!

「蟋蟀(キリギリス)」*srid srud, *srit srutさん、srが一緒です!

これは前の部分、声母が一緒!

そして、「蛺蝶(タテハチョウ)」*keːb l'eːb, *kˤep lˤepですよ!

これは後の部分、韻母eːbが一緒でして、

まあ、日本語で言う「蝶蝶(ちょうちょう)」* l'eːb l'eːb, * lˤep lˤepは重疊(ちょうじょう)ですね(言葉遊びを入れています)!

「蝶(ちょう)」* l'eːb, * lˤepを二回重ねる!

「蝶蝶(ちょうちょう)」* l'eːb l'eːb, * lˤep lˤepでこれ全部来ているよということでして、

まあ、あまり、中国語では「蝶蝶」は使わないですけれども。

だから、なかなかおもしろい!

それで顧炎武さんは、この人が清の初めに音韻学を始めたような人ですが、

彼が《音學五書·音論》の中で言った「《詩·牆有茨》傳,茨,蒺藜也,蒺藜正切茨字」は、

この「茨(いばら)」*zli, *[dzij]も、

やはり、一字で書かれているけれども、

古くは二文字で書かれてるんじゃないかということで、

「蒺藜」*zid riːl, *[dzit rˤij]を見ると、dzが最初にありまして、

そして、後の部分 ij がいうことで、

これを二文字の漢字の音で書いてありますよね。

前の部分と後も部分を取ると復元できると反切みたいだ!

それで思い出したことがありまして、

KF-Ars Sinicaでも前に「筆」をやったんですよね!

そのときに《説文解字》の中に方言として書いてあった「筆(聿)」(*prud, *p.[r]ut)ですが、「不律(*pɯ rud, *pə [r]ut)」ですから、

二つの文字「不律(*pɯ rud, *pə [r]ut)」を一緒に発音しなさいとなりましたら、「筆(聿)」(*prud, *p.[r]ut)になると!

逆に言えば、これも半切みたいで、最初の「不(*pɯ, *pə)」のp をとって、

最後の「律(*rud, *[r]ut)」の[r]utが一緒だと!

「不律(*pɯ rud, *pə [r]ut)」のシュワー[ə]を無視すると「筆(聿)」(*prud, *p.[r]ut)になるわけですから。

こうして分析するとくっつけて見ていただければいいと思うんですよね。

そういった形で二つの音が一つになるという、

まあ、これはもともと、言語として、*prud, *p.[r]utがあったわけですけど、

それをどう文字に当てていくかという問題でもあるんですれども。

もう一つ、思い出しちゃった!

KF-Scholaでやりました「蜜(𧖅)」*mliɡ, *mit)という字も「螟子」*meːŋ ʔslɯʔ, *[mˤeŋ] tsəʔも二字で書いてありましたけれども。

やはり、《説文解字》で「虫」編に冥王星の「冥」に子供の「子」でも書いてあったんですよ!

これもそうでした!だから、やはり、実は反切というシステムは、そもそもある漢字の音を示したいとき、

漢字が当てられた音節の前半と後半を切りまして、

上の字と下の字で書くことですけれども、

それらは、重疊とか、雙声とか、畳韻とか、今お話した最後の現象は、

合聲、二つの字の音がくっついちゃうという、

そういう言葉が沢山あるということから、発想されたと考えられます。

こうして漢語の音節の構造を実例で見てまいれまいれましたけれども、

実際に半切の世界に行ってみたいと思いまして、

こんなものを用意してまいりました。

こちらは、反切が最も発達した隋代に陸法言さんらによって作られた《切韻》ですけれども、

唐代には、いっぱい《切韻》が改訂されて、ひっちゃかめっちゃかにあったんです。

それが断片なって残ってるんですけれども(今見ている「切三」は、677年に長孫訥言が改訂した最も古いバージョンの一つです)。

それと宋代に陳彭年さんらにより改訂された《広韻》ですけれども、

反切の例字が異なるんですよ!

「文」で見てみましたら、やはり違う!

《切韻》「武分反」ですが、《広韻》「無分切ですよ!

しかも、「反」は、反乱とか、縁起が良くないということで「切」の方に変えられていますけれども。

まあ、それらは同じ意味ですけれども、

これは時代によって、少しずつ、この反切の文字自体が変わっちゃってるということは、

音にズレが生じてきて、修正されていった結果なんですよね。

逆に言えば、それらの古い時代の資料でその時代の発音が分かりまして、

一般的には古いバージョンは顧みられなくなって捨てられてしまうんですけど、

こちらは敦煌の洞窟で偶然に発見された残巻で完本ではないんですけれども(少し後の706年に王仁昫が改訂した《切韻》には完本があります)。

「文」の部分の記録があるということでそれは今は大英博物館にありますよね。

こちらは宋代の《広韻》で見てみましたら、

これは完本で残ってますね。宋本であるから、私ちゃんとオリジナルを大事にしてまして、本当に持ってきたわけですよ!

一次資料(primary source)で情報としては、ここに抜き出したように書いてある部分だけ取ればいいわけですよね。

最後のこの部分ですけれども。

こちらの《切韻》は、中古漢語の初期の頃の姿、

こちらの《広韻》は、中古漢語の後期の頃の姿っていうことで、

まあ、今こちらの(完本で残されている)《広韻》で考えるというのは基本的ですから、

こっちで見てみましたら、

現代漢語の方言たちが八つ、

それと日本語、朝鮮語、越南語に引き継がれた字音を見てみたんですよね。

これで反切が何をしたいかは、一目瞭然にもうカラフルに楽しい感じにしちゃっていますけれども(笑)

これでもう「無」に関係する部分が赤、「分」に関係する部分が緑でありまして、

赤が反切上字、声母を示していて、

緑が半切下字、韻母を示しておりまして、

青で書いた部分は、今は合わない!

よく見るとそうなんですよ!これズレている部分なんですね!

そこで大事なポイントが一つありまして、

これは反切で合わせて、こうして音を、今は中古漢語で見ていますから、中古漢語で見ましたら、

「文」mjun /mɨun/(「無」mju /mɨo/ + 「分」pjun /pɨun/) とありますけれども、

実は英語などには音節(syllable)がありますが、

漢語は基本として、一つの文字に一つの音節が充てられていますから、

一つのアルファベットの並びで書かれていましたら、

それは一つの塊として発音されますよね。

✖「文」m、j、u、n /m、ɨ、u、n/とはならないんですよ。

「文」mjun /mɨun/となるんですよ!

分析ができるけれども、やはり、一つの音節のまとまりで発音されるんですよ。

実は中古漢語は、しかも、この後にあるような現代漢語や借用された外国の字音を集めて来て復元されていまして、

よく見るとこれだけ、少しずつみんな違っているんですよね。

似ている音ではあるけれども。

ですから、これをどれが古い音かと選び取らなければいけないということで、

KF-Ars Sinicaやこの漢字のユニークさ探求するシリーズにおいて、

前にこうしたカールグレンさんの研究で「文」の所でありますけれども。

文字学の歴史のところでお見せしましたけれども。

こうして、色んな地点の音や外国に行った音を集めて来て、復元されたわけですよ!

この中古漢語の音、「古音」と書いてありますけれども。

ですから、中古漢語の声母と韻母を当ててゆくのは、

結構大変だということで、

それで今、私が持ってきたようなこうした形で、これは現代的な今一番新しい、

しかも、国際音標の形できちんと書かれていますね。

それと其々の方言においての拼音が書いてありますけれども、

こうした作業をすることによって、

中古漢語の声母がどうなのかということでこちらをちょっと見てみたいと思うんですけれども。

これが、分かってくるわけなんですよ!

結局、今、出ているのが、中古漢語で使われる声母の子音ですけれども。

子音には、調音する場所と方法があって、

この場所が、縦に並んでまして、

伝統的には、五音と五つの場所にありますけれども。

それでこういった形でどんどん下に行くほど、

口の中で調音部位が(脣音、舌音、齒音、牙音、喉音など)、どんどん奥に行くわけですね。

音声学において、IPAのチャートで今まで見てまいりましたことと、これは同じなんですけれども、

調音の部位と方法、まあ、IPAのチャートですと縦と横が逆になってるんですけれども、

昔はアルファベットはないから、例字、例の漢字を書いてるんですよ!

一番最初の音を取りなさいと、それだということでありますから、

絶対的な音は示せてないんですよ。

それでしかも、例字の音自体がどんどん変わってしまうという問題があって、

結構、これが厄介でして、

実は中古漢語の時期は、先ほど《切韻》と《広韻》がありましたが、400年くらいも差があって、何百年にも亘っているんですよ。

《切韻》は隋唐の頃でしょ。

こちらにある《韻鏡》は後で登場しますけれども、これは晩唐から五代の頃かなということでありまして、

かなり、時代差があるんですよ!

それで《広韻》は、もう宋代に改訂されたものですから、微妙に音がずれてまして、

先ず、軽唇音(非p [p̪]、敷ph [p̪ʰ]、奉b [b̪]、微m [m̪])がありまして、

重いと軽いとありますけれども。

元はこれらの四字は、唐代には区別がなかった!

それで敦煌で発見された《帰三十字母例》(S512)とは、

「帰」とは、帰納法の「帰」ですよね。色んな音を集めていったら、三十字母がある!

それで守温さんが作った《守温韻学残巻》(P2012)にも、

元は三十字母があったということでして、

本当はそうなんだと裏付けられるんですよ!

それで三十六字母に六つ増えている!

これどういうことだと!?言いましたら、

先ずこの四字が、唇音が重唇音と軽唇音に分けて四文字が増えて、

しかも、この「牀」dzy [d͡ʑ]とこの「娘」nr [ɳ]さんが追加されているわけですよ!

それで六つ増えました!

しかも、Baxter-Sagartや潘悟雲さんの初期の中古漢語、

切韻音系を再構したものは、

括弧()で書いてある。

ここに書いてある、括弧で括られている、これらの音の並びは、

反り舌の破擦音ですよね。

もしくは摩擦音が五つありまして、

チャートでちゃんと綺麗に横並びにありますけれども。

私は一般的に後期中古漢語の声母のチャート、《韻鏡》で使われる三十六字母ですけれども。

それに初期中古漢語《切韻》の音を入れて、ハイブリッドして書いておきました!

ということでして、 即ち、これを見てわかることが、

漢語の音はどんどん時代と共に変わってゆきまして、

ある音が、分かれたり、混ざったりして、

また、中古漢語の時期にも、方言がありまして、

有名なのは長安方言の非鼻音化ということで、時どき出てまいりましたけれども。

思った以上に複雑ということでありまして、

そして、こちらは、 韻母ですが、

ものすごい数があるわけですよ!

それでこちらは高本漢(カールグレン)さん、

それと白一平(バクスター)さん、

潘悟雲さんが再構した結果が見えておりますけれども。

まあ、最初に高本漢(カールグレン)さんが、

先ほどチラッと出ました研究では、最初に切り開いて、たたき台として、これを考えまして、

それから、現在ではバクスターさんが、

中古漢語のピンインで書きやすいということで用意してくれていまして、

それと潘悟雲さんが国際音声記号(IPA)を用いて再構した結果が見えておりますけれども。

昔はアルファベットがない!

音素で書けないということで、

韻目と言いまして、こんなにいっぱい沢山の全てに名前を付けて、呼んでいたんですよ!

ですから、ものすっごい複雑ですよね。

例字がありまして、等呼と開合ということで、これは何だと!?

直に現れてきますけれども。

こうして、前に現代漢語で北方官話で致しました。

普通話、それと同じように中古漢語でも、

こちらの声母とこちらの韻母の全ての音を把握すれば、くっつけ合わせれば、

中古漢語で使われる、全ての音節を構成できるというビジョンが見えてきたわけですけども、

それで思ったんですよね!

そうした中古漢語の音韻は、

どのような資料でどのような発想で推定されて、

再構されて整備されていったのかということですよね。

それについて、これから見て行きたいと思いますけれども。

先ずはどうして五つの調音部位に分類されてきたのか?

それは声母(子音)でしたけれども、

こちらの五音を見てみたいと思うんですけれども。

やはり、中華文化において、(戦国時代からある鄒衍さんの)陰陽五行説とか、

五行説、五という数は大切でして、

特に音楽理論でも、一般的に音階は、 最初の段階では、五音階(pentatonic)が多いわけですよ!

もともと、宮、商、角、徴、羽という五音音階で構成されていまして、

まあ、それらは三分損益法という方法で五度相生律(ピタゴラス音階)なんですよ!

ここにやり方が書いてありますけれども、

今はこれ(音楽理論)の説明ではないですから、一応やり方だけ、説明書だけ出しておきましたけれども。

それで五つの音を得られまして、

そして、變徴、變宮が加えられたことによって、

ちゃんと、まあ、西洋音楽に相当する音程(interval)で書いておきましたけれども。

二つが加わりまして、それで七つになりました!

七音階になったという、おもしろいことに音楽と音韻が対応していまして、

それで《玉篇》でも書かれていますけれども。

やはり、本当に音楽がちゃんと書いてありますよ!

脣音、舌音、齒音、牙音、喉音ということでして、

これらの五音に半舌音(側面接近音l)と半齒音と言いまして、

側面接近音[l]と硬口蓋鼻音[ɲ]が加えられて、

七音になったんですよ!

私はものすごく、雅楽に興味がありまして、

龍笛を習っていたりしていまして、

唐代の音楽理論にものすごく興味がありまして、

律管で音階を定めて調律をすることは面白いですけれども。

中国にある固有の音楽、

雅楽は五音階でしたけれども、

西域の亀茲国の蘇祇婆が俗楽(インドの音楽理論)を伝えまして、

七音になりましたと!

琵琶の調弦を伝えたんですよ!

実は音楽も、音韻も、インドからの影響がありまして、

中華文化における言語学に相当する「小学」がありましたけれども。

インドのヴェーダーンガ(vedāṅga)がありまして、

これは経典を理解するための補助学問ですから、

(中華文化における)「経学」の下位学問である「小学」に非常に似ておりまして、

文法学(vyākaraṇa)、

語源学(nirukta)、

音声学(śikṣā)、

韻律学(chandas)がありまして、

こちらを見てみたいと思いますけれども。

特に最後の音声学(śikṣā)と韻律学(chandas)が、

音韻学や等韻学に影響を与えたんじゃないかと!

特に調音のシステムによる子音や母音の分類などは、

これは音声学ですよね!

また、押韻のグループによって、

韻母を分類する。

これは韻律学ですよ!

ですから、反切は、確かに漢代から、中国に固有でありましたけれども。

こうした等韻学と言いまして、

韻を整理した韻図、

等韻図ができるには、

音韻の構造への洞察が必須なんですよ!

音韻学のイントロダクションで見ました漢字の音節の構造は、

聲母+韻母+聲調の三点セットでしたけれども。

もう、これを見ますと、横にこれらが並んでいまして、

五音が並んでいて、二つの後で付け加えられた音が並んでありますけれども。

これらは声母なんですよ!

それで縦にあるのが韻母なんですよ!

このね四字は声調なんですよ。

平聲、上聲、去聲、入聲ですけれども。

それで 声母はこちらなんですよね。

調音位置と調音方法だと、子音だからでありますけれども。

そこにはやはり、清濁があるんですよね。

それで分類されておりますけれども、

この「全」とは書いてありませんが、全清(無声無気音)、

次清(無声有気音)、

全濁(破裂音・摩擦音・破擦音の有声音)、

次濁(鼻音・流音などの有声音)でしたけれども。

そして、更に韻母は、韻頭(介音)+韻腹(元音)+韻尾(尾音)の三点セットとお話しましたけれども、

先ずは、頭、韻頭のそこにある母音を介音と言いましたけれども、

韻頭の介音や韻腹の母音について、

等呼がありまして、

それが分類されていまして、

ここにそれぞれ四行あるわけですよ(ですから、四声調で十六行が縦に並んでおります)!

これは一等、二等、三等、四等ということでして、

それと厳密には、重紐三等、重紐四等とありますけれども、

この解釈も一定してなくて、どうして四つの四つの等呼に分けたか、

何を基準として分類されたか、解釈が分かれておりまして、

再構の結果に影響するんですけれども。

(カールグレンさんから)介音に-i-がない直音と-i-がある拗音におおまかに分けられてきましたけれども、

最近ではより厳密に分析されまして、

韻腹の母音を発音するときの舌(が盛り上がる場所)の位置と考えられるんですけれども。

IPAのチャートで見てみますとこのようになるんですよ!

前に現代漢語の北方官話でも、

拼音e [ɤ]を出すときに「舌が後ろ!」とものすごく強調しましたけれども、

実際に漢語は、それ以外の母音でも、

こちらの[i]や[y]を除いて、

殆どが後舌の母音なんですよね。

そして、中古漢語でも、一等は韻腹に[ɑ][ɒ] [o][ɔ] [u][ə]の母音が来ておりましてね。

シュワー[ə]以外は、全て完全な後舌なんですよね!

シュワーも、実は前に複母音でいたしましたけれども。

実は基本母音は完全な後舌(非円唇後舌半狭母音)[ɤ]でしたが、

それが前後の音が影響をして、

母音をなめらかに発音するため、

前舌ぎみになり発音しやすいことも考えられるんですね。

それで二等は、前舌ぎみの広母音[a][æ][ɐ]でして、

前舌で口が広く開いている!

それで四等は、前舌のやや狭母音[e]なんですよね。

少し狭い狭母音[e]の韻腹ですよ!

そして、三等は、これが厄介ですけれども。

(介音に)[i]とか、もう少し後舌の[ɨ]とか、もしくは、重紐に関係しますけれども。

硬口蓋接近音[j]とか、

軟口蓋接近音[ɰ]とか、

もっと奥ですけれども、

現代漢語の北方官話でもありました兒化音er [ˀɤɻ]のそり舌接近音[ɻ]が(介音に)ありまして、

韻複には色んな母音が付くんですよ。

先ほどの中古漢語の韻母の再構をじっくりと見ていただければ分かると思います。

それで戻ってみますよ!

それで気になる。この「開」は何だ!?

先ほど「開」と「合」と、逆の言葉が「合」ですよね。

開いているか、閉じてるかということですけれども。

今で言うと、介音の母音を発音するときの口の開け方で、

初期の中古漢語では、開いているか、閉じているか、「開」と「合」しかなかったんですけれども。

開口呼と合口呼と言いますけれども。

まあ、現代漢語で前回に出てまいりましたけれども。

四呼と言って、四つに分かれて、

清代の潘耒さんが、

《類音》という、音韻学の研究書の中で、

四つが前回の最後に出ましたよね(笑)

開口呼・斉歯呼・合口呼・撮口呼ということで分類されてましたけれども。

そして、韻母の真ん中の部分、

腹の部分、韻腹について、

今度はこの「内外転」という概念がありまして、

「内外転」がここに書かれてまして、

これはそこに来る母音は真ん中の主母音の分類でして、

内転は狭母音、

そして、外転は広母音、

もしくは、内転は弱い母音、

外転は強い母音とか、

逆に言えば、内転は韻尾が長い、

外転は韻尾が短いとか、言われているんですけれども。これは所説あるんですよ!

韻尾について、お尻の部分ですが、

それは母音で終わります。陰声韻(-ø, /-i/, /-u/)と言いまして、

そして、鼻音で終わります陽声韻(/-m/, /-n/, /-ŋ/)と言いまして、

そして、塞音で終わります入声韻(/-p/, /-t/, /-k/, /-ʔ/)と言いまして、

(音韻学のイントロダクションの回でお話しましたよう、)そういうことでありましたけれども。

それらを十六に分類をしたこともありまして、

韻尾の終わり方。

陰声韻(-ø, /-i/, /-u/)、陽声韻(/-m/, /-n/, /-ŋ/)、

それと先ほどの内外で内転と外転で半分に分けられて、構成されるということでして、

韻書では、韻摂で分類されておりまして、

「摂」はサンスクリット(saṃgraha)の訳で仏教を思わせる名前でして、

(無著Asaṅgaの)《摂大乗論(Mahāyāna-saṃgraha)》などが有名ですけれども、

元は《切韻》では十一摂ありましたけれども、

《広韻》では十六摂に多く分類されて、

章立てられておりまして、

《韻鏡》もそれに対応しておりますから、

こちらに「転」とありますけれども。

実は第一転から、第四十三転までありまして、四十三枚の韻図がありまして、

そこに包摂されてますと!

包摂の摂ですけれども。

韻摂は韻部ともいわれて、

まあ、近い言葉でありますけれども、

中古漢語の韻母を帰納して、

韻目を分類して得られているということでして、

それで《切韻》や《広韻》などの韻書は章立てられているということに対応するということで考えてよろしいのではないかと思います。

結構、色んなパラメータによって、

昔の人は一生懸命分類しようとしまして、

入声で終わる韻尾は、声調(平聲、上聲、去聲、入聲)に関係するということでして、

音韻学のイントロダクションの回にて、

もう大盛り上がりしましたけれども、

声調に関しては、申し上げましたように、四つの平聲、上聲、去聲、入聲であるということでして、

隋·陸法言《切韻》は一九三韻、

唐·孫愐《唐韻》は一九五韻で二つ増えているんですけれどもね。

それで、宋·陳彭年《廣韻》は二〇六韻で結構増えているということでありますけれども。

実はこれらの沢山の韻は、

この四つの声調によって分類されていまして、

基本的には、これらの韻書は、

平声はものすごく多いんですよ!

ですから、一、二巻なんですよ!

それで上声が三巻、

それで去声が四巻、

入声が五巻ということで、

四つの声調により巻を分けて、分類されているということでして、

すごい大事だと整理をしていく上でということなんですけれども。

これで言えることは、

この《韻鏡》という韻図は、

特に《廣韻》の韻を整理したものでして、

今はだーっと漢語の音節の構造でそれらがどこに当たるのか、どういう分類なのかを当てて見てまいりましたけれども、

最後にもう一回、整理しますよ!

韻母は韻頭+韻腹+韻尾、

頭、真ん中、お尻ですよね! 平たく言えば、それらに分かれます!三点セット!

そして、韻頭、頭には等呼が四つありましたということでして、

ここに情報が入っています!

そして、韻腹、お腹の部分には、

やはり、等呼、 また、内外転や十六摂という分類が関わっておりまして、

そして、韻尾、お尻の部分は、

やはり、十六摂や陰声韻、陽声韻、入声韻ということでして、

最後の子音が関わっているわけですよ!

それでかつ声調でも分類がされるという、

韻母は複合的に成り立っていて、

昔の人は、やはり、こういう図を作りたい!

韻図を作りたいといった時に数を減らすために、

パラメータを特定して、場合分けをして、グルーピングをして、

そして、それらを表にまとめたという発想を伝えなかったわけなんですよ!

もう一杯で複雑な概念が出てきましたよね!

そういうことなんですよ!一言でまとめてしまうと!

そして、特に声母は、こちらの上の部分に関係しておりますけれども。

三十六字母で成り立つとありましたけれども。

今まで音韻体系で見てまいりました子音に完全に対応するわけですよね。

それらはこちらで定義をされていまして、

先ほど、再構された音で示した図が出てましたけれども。

これが当時の《韻鏡》の中でちゃんとこのページが全部出て書いてあります!

ということでして、

こうした形で子音を分類してた。当時の五音がありましたけれども。

唇音は重いのと軽いので分けられている!

本当だ!

それで舌音は舌頭と舌上で分けられている!

本当だ!

それで歯音は歯頭と正歯で分けられている!

本当だ!

それで牙音と喉音がここにありますね!

そして、五音に加えられた二つの音、

半舌音と半歯音はここにありますというわけで三十六字母が、現代的に表現された先ほど見ていましたから戻ってみましょう。

こちらなんですよね。

ですから、ここに《韻鏡》と書いてあったのは、

実は今見てきた表なんですよ!

それを今、現代的にどういう音なのか、国際音声記号を当てて、再構したわけですけれども。

ですから、こうした形で横が調音方法、

縦が調音部位ということで、きちんと子音が分類されていると!

こんなにやはり子音が並んでありますからね!

だけれども、すごいきれいに並んんでいまして、

ここは、四四四四、三三三三ですごいここも規則的でして、

あとはちょっとまばらですが、

それで後で加えられた音は、

こことここ、

それはある意味、一つ言えるのは、

理論的にとてもきれいだから、

対称性が美しいからということはあるかもしれません!

そういうことで一つ面白いものがございまして、

行ってみたいんですけれども。

こちらは、先ほどの三十六字母を覚えやすくしたのが、

こちらの《指掌図》と読んで字のごとく、

指に唇音、舌音、歯音、牙音、喉音を当てて、

それで掌に半舌音(側面接近音)[l]と半歯音(硬口蓋鼻音)[ɲ]が当てられていますね。

やはり、五というのは、人間の手が五本あるからリーズナブルじゃないかということで、

しかも、何故か思い出してしまったのが、

グイドの手(笑)

これは西洋音楽で音階を図示するために使われまして、

やはり、見えない音を手に写し取ることによって、記憶をしやすくするという、

まあ、一種の記憶法ですよね。

概念を視覚化するとイメージしやすいですね。

本当に東西でそっくりで笑ってしまいました!似すぎですけれども(笑)

この《指掌図》は、宋代の司馬光さん、

この方は結構有名でして、《資治通鑑》という歴史書を編纂した。

彼が《切韻指掌図》を作ったと言われてますけれども、

そうでないという説もありますけれども。

こちらを見てみますと、

《指掌図》に付属する韻図ですが、

きちんと三十六字母が横に並んでいますよね。

それでちゃんと四つの等呼が並んでありますよね。

そして、四声がありますよね!

ちゃんと読んで字のごとく!

こちらでも続きありまして、

三十六の先ほど表にあった例字が並んでおりますね!

「韻」と書いています。

そういう理由で同じ韻をグループで漢字が並べられた表は、

こうしてあるわけですけれども、

どうしてこうしたものを作られたかと言いましたら、

音韻学のイントロダクションの回でお話しましたけれども、

これは詩を作る時に韻を踏む、

押韻する字を考えるとき、

こうした韻図と呼ばれるチャート、韻書と呼ばれるハンドブックを用意しておけば楽なんですよね!

すごく詩を作りやすいということでして、

KF-Ars Sinica(系譜でたどる中華文化)ですから、

今まで見てまいりました音韻の理論だけではなくて、

実際の文学で見てゆきたいと!こんなものを見てみましょう。

唐詩といえば、

やはり、杜甫でしょ!

ということで二首持ってまいりましたけれども。

何と言っても、中古漢語を再構して、何になるんだ?と言われたら、

純粋な言語学的な興味として、一〇〇〇年以上前の昔の人たちがどういうことをしゃべっていたのかということとか、

更に遡って、上古漢語や漢蔵祖語を理解する時にも役に立つということもありますけれども。

やはり、こうした文学作品を当時の音で楽しめる!

味わえるという面白さがあるわけですよ!

それで私は、詩賦、先ほど見ました《詩経》と《楚辞》から来ていますけれども、

詩賦、日本で言うと漢詩に当たりますけれども、

私は漢詩が好きですから、

もう、うれしくて、杜甫(duoX pɨoX)の名前と詩の題名〈別李義(bˠiᴇt̚ lɨX ŋˠiᴇH)〉を中古漢語の再構された音で書いちゃいましたけれども、

まあ、サービスということで(中古漢語で)これを読んでみますか!

杜甫の〈別李義〉は、李義と別れる時に作った詩ということで、

杜甫(duoX pɨoX)ということで、

そして〈別李義(bˠiᴇt̚ lɨX ŋˠiᴇH)〉ということで読める!

それで中身もこれらの漢字の中古漢語の音を再構できますから、

全部、当時の音でこの詩を読めるわけなんですよ!

これはなかなか面白い!

それで〈別李義(bˠiᴇt̚ lɨX ŋˠiᴇH)〉は、

767年に杜甫が夔州、今の重慶、四川の東側で李義さんが成都、これは四川へ行くとき、

送別をして贈った詩ですけれども、

杜甫は自分が唐の皇帝に血がつながることをアイデンティティとして持っていて、

「中外貴賤殊,余亦忝諸孫(ʈɨuŋ ŋuɑiH kʉiH d͡ziᴇnH d͡ʑɨo, jɨʌ jiᴇk̚ tʰemX t͡ɕɨʌ suən)」に書いてあるんですよね。

これを中古漢語で言ってみますよ(笑)

「中外貴賤殊,余亦忝諸孫(ʈɨuŋ ŋuɑiH kʉiH d͡ziᴇnH d͡ʑɨo, jɨʌ jiᴇk̚ tʰemX t͡ɕɨʌ suən)」

そして、現代漢語の北方官話では、

「中外貴賤殊,余亦忝諸孫(zhōngwài guìjiàn shū, yú yì tiǎn zhūsūn)」

ということですけれども、

「中外、貴賤、殊なるも、余、亦た諸孫なるを忝くす」というのは、

李義さんは直系で私は傍系だけれども、

子孫には変わりないだろうと詠んでいますけれども。

そして、お目当ての韻ですけれども、

赤でハイライトして、中古漢語の音を下に書いておきました!

この詩は全部、ここで元部(ɐn)と言いますが、

「元」(ŋʉɐn)と同じ韻を踏んでいるということでして、

元部(ɐn)と言いますけれども。

全部、押韻してますよ!これすごいんですよ!

ものすごくこれは気持ちよくて、

全部の音が韻を踏んでます!

やはり、これ書き下して読んじゃうと面白くない!

押韻とか、平仄が、壊れてしまうんですね!

だから、中古漢語で読むとリズムが気持ちいいんですよ!

これはすごくということで、

中古漢語で見てみますね。

門(muən)

昆(kuən)

孫(suən)

溫(ʔuən)

論(luən)

敦(tuən)

坤(kʰuən)

存(d͡zuən)

喧(hʉɐn)

奔(puən)

蓀(suən)

魂(ɦuən)

昏(huən)

尊(t͡suən)

煩(bʉɐn)

源(ŋʉɐn)

軒(hɨɐn)

恩(ʔən)

翻(pʰʉɐn)

飧(suən)

痕(ɦən)

根(kən)

吞(tʰən)

ということで(笑)

これは全部、韻を踏む!

非常に面白い!押韻してるとインパクトがありますよ(韻を吹くからインパクトというジョークです)!

やはり、漢語は一つ一つの音節がはっきりしているから、

やはり、最後のところの韻を踏むと、

そのイメージが鮮やかに映えるんです!

言葉の意味がすごい印象付けられるんじゃないかと!

だから、単に音を揃えているのではなく、

ここで締めますよと。

これでこの部分で一つだということですごくはっきりするわけですよ!

だから、漢詩とは、こうした構造を持っているということで面白いですけれども。

もう一つ、それでは、見てみますよ!

杜甫の〈送率府程錄事還郷(suŋH ʃˠiuɪH pɨoX ɖiᴇŋ lɨok̚ d͡ʒɨH ɦˠuan hɨɐŋ)〉を中古漢語で行きます!

〈送率府程錄事還郷(suŋH ʃˠiuɪH pɨoX ɖiᴇŋ lɨok̚ d͡ʒɨH ɦˠuan hɨɐŋ)〉

ということでありますけれども。

この詩は、756年に長安にいた杜甫が、友人の程さんが、田舎に帰るとき、

お別れ会をしたときに読まれた詩ですけれども。

これですごいのは、「還郷(ɦˠuan hɨɐŋ)」の有声([ɦ])と無声([h])、

しかも、鼻音([n]と[ŋ])の対立もかなり、強調して言いましたけれども、「還郷(ɦˠuan hɨɐŋ)」でありますよね!

結構、中古漢語は、子音も豊かで母音も豊かで(発音が)難しい!

そして、今度こちらの内容を見ますと、

これはすごいですよ!

これが、やはり、全て緝部(ɪp̚)で「緝」t͡sʰiɪp̚という感じと同じ韻を踏む。

それでしかも、これをどうして持ってきたかというと、これは全部[p̚]で終わってる!

これは入声で押韻していますということで、これこそ、

唐詩だというくらい、もうお手本みたいにきれいに韻を踏んでいますけれども。

見てみますよ!

これは、

集(d͡ziɪp̚)

十(d͡ʑiɪp̚)

立(liɪp̚)

入(ȵiɪp̚)

及(ɡˠiɪp̚)

蟄(ɖˠiɪp̚)

泣(kʰˠiɪp̚)

襲(ziɪp̚)

給(kˠiɪp̚)

粒(liɪp̚)

澀(ʃˠiɪp̚)

濕(ɕiɪp̚)

戢(t͡ʃiɪp̚)

急(kˠiɪp̚)

おお、すごい!全部、韻を踏んでる!

これもすごい詩ですよね!

本当にもうお見事じゃないか!

かなり盛り上がっておりますけれども!

そして、また次に行ってみますよ!

こちらは、もう、韓愈さんも、すごいですよ!

この人も本当に!

韓愈(ɦɑn jɨoX)の〈苦寒(kʰuoX ɦɑn)〉というということで有名な詩ですよね。

(中古漢語で)〈苦寒(kʰuoX ɦɑn)〉ということでありますけれども、

この詩は、803年に大雪が降ったときに世相を風刺して読まれたわけですけれども。

この《広韻》をみましたら、

この「苦」という字には、

上声(kʰuoX)と去声(kʰuoH)がありまして、

それでここに小韻とありますのは、

完全にこの「苦」と同じ音を持つグループなんですよ!

「苦」と同じ音は「苦」と当たり前だろう(笑)という感じですけれども(ちなみに反切の後に書かれた数字は小韻の数、即ち、全く同じ音の字の数です)、

まあ、この「寒きに苦しむ」ということでしょう!

まあ、この「患」は「患う」と日本語で訓ぜられますけれども、

「苦しい」という意味がありまして、

だから、上声でいいかなと思って採用しましたけれども、

意味によって声調が違う!音も違う場合もありますけれども、

それで今では、官話「苦」kǔ /kʰu⁵³/と読めますし、

粤語「苦」fu2 /fuː³⁵/でも、官話のkは大体、粤語のfに行くんですけれども。

粤語「苦」fu2 /fuː³⁵/と読めますから、

上声を継いでいるんですよね。

それで上古漢語では*kʰaːʔ, *kʰˤaʔですね。kʰの有気音(aspirated)で一緒だと!

今の官話も、中古漢語も、上古漢語も殆ど変わっていないです!

子音の後の母音がaʔがuになっていますけれどもね。

更に漢蔵祖語「苦い」*b-ka-n/m/ŋまで行くと「苦い」という意味でして、

チベット語ཁ་བ kha ba /kʰa/で「苦い」も上古漢語「苦」kʰaːʔ, *kʰˤaʔと同じだと!

ビルマ語ခါး hka: /kʰá/で全部同じ!

これはすごいですけれども、

まあ、いつもの癖で語源まで言ってしまいましたけれども、

この詩は仙部(ᴇn)、

「仙」siᴇnと同じ韻を踏みまして、

全てが押韻していまして、

兼(kem)

廉(liᴇm)

謙(kʰem)

尖(t͡siᴇm)

甜(dem)、

砭(pˠiᴇm)

蟾(t͡ɕiᴇm)

、覘(ʈʰˠiᴇm)

炎(ɦˠiᴇm)、

沾(ʈˠiᴇm)、

鐮(liᴇm)

拈(nem)

箝(ɡˠiᴇm)

簽([t͡sʰiᴇm])

、添(tʰem)

縑(kem)

潛(d͡ziᴇm)

、髯(ȵiᴇm)

、 殲(t͡siᴇm)

、纖(siᴇm)

、淹(ʔˠiᴇm)

、燖(ziᴇm)

、占(t͡ɕiᴇm)

、嫌(ɦem)、

苫(ɕiᴇm)

恬(dem)

漸(d͡ziᴇmX)

瞻(t͡ɕiᴇm)

鹽(jiᴇm)

、憸(siᴇm)

、簾(liᴇm)

檐(jiᴇm)

黏(ɳˠiᴇm)

蒹(kem)

襜([tʰiᴇm])

厭(ʔiᴇmX)

という感じで全部、

韻をきれいに踏んでおりまして、

なかなかこれだけ綺麗に韻を踏むのは、

やはり韻を踏むように詩を作るけれども、

珍しくて、面白いから、

杜甫さんと韓愈さんが書いた詩は、

結構な数残ってますけれども探すの大変でした!

そして、私、杜甫や韓愈の全集を持っていますから、

全部見てゆき探したんだけれども。

どうもありすぎてということで、

王力さんの《漢語語音史》という非常に名著がありますけれども、

その中に挙がっていた例なんですよ!

やはり、いいところを見つけてきたということでありましたけれども、

こうして中古漢語を知ることにより、

唐詩の音とジャストフィットして楽しめるということで価値があるのではないかと思いまして、

そして、思う事がありまして、

今まで反切を集成した韻書や字音を整理した韻図を見てまいりましたけれども、

それらは理論でして、実際と合わない所や定説をみない所も多くありまして、

やはり、本物の音がどうだったのかを知りたい時には、戻ってみますよ!

現代の漢語や外国の字音ですよね。

上古漢語から直接、

閩語は別れたと言われていますけれども、

一般的に中古漢語から分かれた子孫たちを対照して推定してきましたということで、

自然と反切のシステムと、まあ大体は一致しますけれども。

まあ、ズレも分かるということでしたけれども、

やはり、本物の音と理論値とずれていることは結構ありまして、

それらをどう解釈するのか、

音韻学者とか、言語学者たちは、一生懸命してきたんじゃないかと思ったわけですね。

それで反切とは、漢字の音を半分に割る所まではしましたけれども。

究極までは分析していませんでして、

というのは、こうしたアルファベットで、音素で国際音声記号で書かれてないから、

結構な問題がありまして、

重紐といいまして、重なってしまう!

それはどういうことかといいましたら、反切上では同じような音になるんだけど、本当は違う音だったとか、

そういう問題が生じてきて、理論値とずれていまして、

それでそれは(ソビエトの)ヤホントフさんや(アメリカの)プーリブランクさんなどが解明して、

バクスターさんやサガールさんたちが専門でして、

挟み込まれた介音-r-とか、-j-とか、

国際音声記号でいいましたら、反り舌接近音[ɻ]とか、硬口蓋接近音[j]とか、

咽頭化(pharyngealized)された音[ˤ]が関わっているというような解釈をして、

中古漢語の再構の最高した音に反映させていますから、

最新の研究で再構した音で見てゆけばいいと思いまして、

私、結構今回、お話をするとき、

やはり、音韻学には結構、細かい話が多いんですよ!

ですから、そういうところは、どこまでお話すればいいのかなという部分で悩んだわけですよ!

それで思ったのは、研究史と最先端の情報、

今一番はっきり分かっていることを切り分けまして、

物理学でも、もう別に数百年前の研究、そのものをああだこうだと話したり、学んだりする人は、

まあ、科学史の専門家ではない限り(しないわけでして)、

最新の今、分かっていることを学ぶということですけれども。

それと同じで中古漢語なり、上古漢語なり、

今最新のいろんな結果、いろんな試行錯誤して、考えられてきた結果、これが当時の音なんじゃないかなと、

今一番、フレッシュな結果でいいじゃないかと!

それでそれに至るすごく大事なアイディアを大事にしてお話してきたんだと思うんですよ。

本当に中古漢語を知るには、今はもう音素文字、アルファベット、国際音声記号で書かれた再構結果がありますから、

それから考えればいいと思うんですよね。

ですから、韻図の細かい概念はさらりと行きまして、

まあ、音節を分類する要素、パラメーターというのは、

こういうものがあるんだよというくらいの紹介に留めましたけれども、

細かいことをご興味をお持ちになられた方は、

音韻学の解説書を読むと、ものすごく詳しく書いてありますから、いいと思うんですよ。

私も全部、もう一回、色んな音韻学の専門書を読んで、

まあ、どこが一番そのポイントなのかなと、そのエッセンスなのかなと考えながら構成してきたつもりです。

それで音価と音素の話でも、

もしくは、声調というのも方言によって、

結構、調値が違って、複雑なんですけれども、今でもそうですけれども、当時もそうだったでしょうけれども、

あまりにも小さい所に厳密が過ぎると、やはり、大切なことというのは、見落とされてしまうということがありますから、

割とファジーに全体でこれじゃないなと、そういうのをつかみながら、

それで細部を見ていく方が、実は上手く行くことが多いんですよ!

これは音韻学に限らず、全領域においても、そうだと思うんですよね。

ですから、こうして中古漢語の声母と韻母の全体を捉えて、色んなこうした例を出しながら、

こういうイメージを持っているんですよ!こういう世界なんですよ!ということを見てゆきたいという感じでして、

大切なことは、本当に細節に入り込んでゆくんじゃなくて、全体として捉えていけば、

細部も自然と繋がっていくじゃないかというようなイメージで探究をすると効率がいいということは、

結構、私は気づいたわけですよ!

これで最初にじゃあ何をしたいんだと言いましたら、

西洋音楽でも、古楽というのがありますよね。

これはやはり、(言語の)音と同じで数百年経つと趣向とか、

楽器そのものであったり、

そうした、色んな要因によって、

同じ音楽でも、受け継がれているように見えながら、実は少しずつ変わっていくんですよね。

だから、その当時にこうだったんじゃないかっていうような音を伝えてくれる史料とか、

楽器とかを研究することによって、

当時、何百年前っていう、時を隔てて、

その時の響きを再現したいっていう興味があるわけですよ!

それで古楽という分野がありますけれども、

それ似ているじゃないかと!

この音韻学のロマンはやはり、

当時の驚き!

隋や唐の人たちの生の声を聴きたい!

そう言う興味やそれから当時の文章も当時の音で読んでみると、やはり、すごいですよ!

本当にそれで考えて作ってるわけですから、

バッハとか、モーツァルトが、こういう音でイメージして、こういう作品を書いたというのと同じで、

杜甫とか、韓愈が、どのような音をイメージして、唐詩を作ったのか!

詩賦を作ったのか!

ということを知りたい!味わいたい!聞きたい!

とそういう興味から来ているわけですよね!

だから、音韻学の面白さは、

そういうところじゃないかなと思いました!

だから、本当にこうした形とか、こうした形で声母と韻母が復元されておりますので、

それはこうした色んな中古漢語から分かれた、

もしくは上古漢語から分かれた子孫たちの言葉の音を拾い集めて、

古の音を知りたい!

という非常にロマンに溢れる分野ではないかなと思って、

かなり、興奮してまいりましたけれども、

次回からは、上古漢語の方に行ってみたい!

それで更に漢蔵祖語はどうなのかというような、

そういう興味の方にね伸ばしてみたいなと思って考えておりますので、

どうか続編もご期待くださいということで、

楽しくやってまいりたいと思います!

KF-Ars Sinica、これからも漢語の世界のおもしろさを、当時の資料で見てゆきたいともいますから、

どうか応援下さいましたら幸いです。

今回もご覧くださりまして、ありがとうございました。

失礼をいたします。

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